北海道のとある町に一人の男が引っ越してきた事で、微かにだけど確かに新しい風が吹いてくる。
不器用な男は町の人の優しさに触れ、町の人は男の純朴さと自然な包容力に触れ何かが変わっていく。
それは人付き合い?心の成長?未来に向けての展望?
時にはぶつかり合い時には涙を流し、そして時には喜びで解けていく人間模様。
物語の舞台となる北海道当別町、静かに時間が流れて行くこの町でも人は何かを背負い、何かを抱え生きています。
人の描写や心象風景、世界観が丁寧に描かれており、その町の時間の流れでさえも肌で感じ取れるような物語となっております。
登場人物達が抱える悩みは皆が一度は通ってきたかもしれないありふれたものから、経験したくもない重いものまで、まさに群像劇とも言える部分でありヒューマンドラマの醍醐味とも言える見所かと。
北海道の当別町に住む高校生の美葉は、ある日、隣の体育館に引っ越してきた家具職人の正人と出会います。
不器用な性格の正人を手伝う内に、頑なだった美葉の気持ちはほぐれていき、周囲の人々も少しずつ変化していきます。
丁寧で優しい文章で、登場人物の気持ちや美しい風景にほっと癒されます。
美葉ちゃんの気持ちの変化もとても自然で、優しく見守っているような気持ちで読んでいました。
周囲の人々の葛藤なども描かれていますが、心をざわつかせるような感じではなく、思わず気持ちに寄り添って一緒になって考えてしまいました。
北海道の自然の描写もくどくないのにしっかりと描かれているので、そういった所もこの作品の魅力だと思います。
美葉ちゃんのような学生さんから大人の方にもおすすめしたい、とても優しいお話です。
北国ならでは自然の描写が美しく、そこに確かに息づいている人々の姿があります。流麗な文章で情景が描かれており、登場人物たちの心情も繊細に表現されていて、じんわりと胸に染みました。彼らの心が遠ざかったり、近付いたりしながら、心を通わせていく表現力は秀逸です。
家具職人や空間デザイナーなどの仕事についてもしっかりと描かれていて、素晴らしい。才能ある若者に説得力を持たせていることに感服しました。
17歳の美葉と、ほぼ生き倒れていた家具職人の正人が出逢って始まるこの物語。美葉の個性的な友人たちも加わり、彼女たちは困難に悩み、窮し、足掻きながら、それでも未来に向かって進んでいくのです。
彼女たちを支える大人たちの中でも、節子おばあちゃんが、それはもう温かで素敵です。きちんと年齢を重ねてきたのだなという、これまた説得力のある言葉をくれますよ。
この物語はシリーズの一作目。
美葉や正人たちの成長を描いた物語ではありますが、美葉と正人のまだ淡い恋を描いた物語でもあります。
二人の心が徐々に近付いていくさまは、もういっそ両方の背中を押してやりたくなるほど! 互いを支え合い、補い合う二人の姿は、ずっと見ていたくなりました。
ぜひ、北の大地で生きる若者たちの青春を感じてみてください。
昔あったCMの真似ではないですが、「ファンタジーもいいけど、人間ドラマもね」です。
読書の秋だからこそ、いつもと違ったジャンルの作品を読んでみてはいかがでしょうか。
本作は美しい文章で紡がれていくヒューマンドラマであり、主人公を中心とした青春の一頁を切り取った丁寧なドラマです。
具体的なレビューは他の方が書かれているので割愛するとして、一つのことにこつこつと打ち込む主人公と、それを取り巻く他の人たち、そして雄大な北海道の自然と共に生きていく人間賛歌の物語でもあります。
様々な葛藤があります。それを一つ一つ乗り越えていった先にあるものとは。
この物語には現代の人間が直面する色々な問題が描かれています。
どう立ち向かっていくのか。一人ではない、多くの人たちと共に手を取り合って生きていくということは、どういうことなのか。
じっくり考えさせてくれるとても素晴らしい作品です。
是非とも手に取ってゆっくりと嚙みしめるように味わってください。
ただ静かにそこに在る自然、青春期の瑞々しい強さと弱さ、ほんの少しの生き難さを隠した笑顔……そんなステンドグラスを思わせる物語です。
主人公の正人は、ノープラン&ノーヴィジョンで手作り家具工房を開こうとして、そのだいぶ前の段階で凍死しかける残念なイケメンさんです。
正人にあきれながらも放っておけない世話焼き女子高生の美葉を始め、北海道の片すみで生きる人たちの輪が、正人を加えてちょっとだけ形を変えつつ、つながっていきます。
過去と今と未来、閉塞感と安息感、ここではないどこかに向かう地図、変わっていく不安と変われない焦り、少年少女をとりまく世界は鮮やかで、すれ違う大人たちの背中も横顔も、深い印象を残してくれます。
そして、なんとか二人で軌道に乗せた家具工房の岐路に立ち、お互いを見つめ直して、決断する正人と美葉……彼らに、心からのエールを贈りたくなるラストが秀逸です。
物語の舞台は北海道。
高校生の女の子と体育館(!)に突然越してきた家具職人を軸に、友人やご近所さん、家具工房のお客様など、様々な境遇の人々が登場します。
登場人物は多いのですが、描写の中で一人一人の生き様や価値観が見えるので、自然とそれぞれの人物に寄り添うことができました。エピソードの長短にかかわらず全ての登場人物の心をここまで書き切ることのできるのは、本当に素晴らしいです。ページを捲る度、リアルな人間ドラマに、気づけば引き込まれていることでしょう。
ところでこちら、続編もあるようです!
一気読み派の方にもオススメですし、前述のとおり描写がしっかりしているので、私のようにゆっくり楽しみたいタイプでも「前回何があったっけ!?」とならずに読み進められると思います。
ぜひ皆様に読んでいただきたいです。
北海道にある家具工房を舞台に、そこに集まる人々の人間模様を描いたお話です。
廃校の体育館に住み着き、家具工房を始めた正人。ビジネス センスも生活力もない正人を見かねて、つい手を貸してしまう隣に住む高校生の美葉。二人は家具作りを通して様々な人に出会い、その中で自分たちの人生を見つめ、手探りで進んでいきます。
北海道を舞台にしているだけあって、自然の描写が印象的です。空の広さ、その広い空にかかる二重の虹、夏の蛍、土地を力強く守る防風林、街灯のない中を車のライトだけに頼って進む夜道……。
その自然を背景に、そこに生きる人達の生活と人間関係が丁寧に描かれます。農作物を育てる苦労。そして苦しいときに手を差し伸べる隣人たちの優しさはもちろんのこと、それだけではなく、ときには密過ぎる関係に息苦しさをこぼす登場人物たちがリアルです。
過去の体験からつい人に厳しくなったり、人間不信になったりして、きついことを言ってしまう人たち。割り切れない人間関係にはまってしまい、噂の種になってしまう人たち。登場する人物の豊かさと描写に、書き手が持つ人間性の深みと観察力の高さが表れています。
そして、それを乗り越えてまた新たな絆を結び直す人々を見て、私たちは希望と心の温もりを感じるでしょう。ぜひともたくさんの人に読んで欲しい作品です。
おまけ:
あと、ご飯がとても美味しそうです! 大根と薄揚げ (関東人には「薄揚げ」って言葉だけで既に美味しそうに思えます!) のお味噌汁や芋団子 (って知りませんでした。今度作ってみよう!) などなど。まるごとのロールキャベツとか食べてみたいです!
北海道のとある町、一人の男が廃校の体育館に住みつきます。
男には何もなく、ただ、家具を作ることが得意でした。
そんな男に最初に興味を示したのは近隣の高校生たちでした。
彼らは男に興味津々でしたが、男の持つ優しい雰囲気に触れ、次第に打ち解けていきます。
やがて周囲の大人たちも男を温かく包みこみ、家具屋として自立するのを助けるようになるのでした。
これはとある一人の男と、とある町の人々が巻き起こすハートウォーミングなストーリー。
北海道といえば広大な大地に雄大な自然、もちろんこの小説はそれを感じさせてくれます。
だけどさらに読み進めたとき、誰しも悩み、誰しも重い何かを背負って生きていることに気付かされます。
そして男の作る家具は、そんな人の心に寄り添うのです。
あなたもこの物語を読めばきっと、この町に住み、自分の家具を作って欲しくなりますよ。
このご作品は、純粋なお人好しだけれど空気が読めない残念イケメン家具職人の正人さんが、天使のように美しい(正人さん談、そしておそらく客観的評価)悩める女子高生・美葉さんと出会う場面から始まります。
このお二人が互いに影響し合い、時には反発し、また時には理解に苦しみつつも、人間として成長していくお話です。精緻な純文学でありながら、同時にライト層の皆様にもオススメできる、とても魅力的なご作品です。
お仕事小説としては、章ごとに一つか二つの依頼が舞い込み、正人さんが求められる課題に丹精込めたオーダーメイドで応えていくという構成なのですが…彼一人ではどうにもならない部分、主に営業や経営感覚、そして何よりもインテリア・空間デザインセンスの面で、美葉さんが見事に補ってくれます。
美葉さん、性格面も学生離れした本当にデキる女なのですが…そんな彼女にも弱い部分はあり、そこを逆に正人さんの優しさが癒し、包み込む…そんなお二人をずっと見ていたくなります。
建築・材料・色彩・産業…あらゆる知見がお客様を幸せにするため、一つのコンセプトに向かって集約していく様からは、彼らの得た達成感を物語のカタルシスとして追体験できる心地がします。
そして青春小説としても秀逸なご作品です。「雲のテーブルと俺らの居場所」は美葉さんのお友達にフォーカスし、正人さんが大きな仕事を抱えていない様子というイレギュラーなエピソードなのですが…高校生の繊細な情緒と関係性の変化を見事に描き切っておられ、この章だけでも長いレビューを一本書きたくなるほどの充実度と完成度に脱帽します。
タイトルの意味に思いを巡らせつつ、花鳥風月の美しい描写にもご注目ください。まだまだ面白さを語り尽くせません。ぜひ御一読ください!