北の大地に息づく人々の温もり

北海道にある家具工房を舞台に、そこに集まる人々の人間模様を描いたお話です。
廃校の体育館に住み着き、家具工房を始めた正人。ビジネス センスも生活力もない正人を見かねて、つい手を貸してしまう隣に住む高校生の美葉。二人は家具作りを通して様々な人に出会い、その中で自分たちの人生を見つめ、手探りで進んでいきます。

北海道を舞台にしているだけあって、自然の描写が印象的です。空の広さ、その広い空にかかる二重の虹、夏の蛍、土地を力強く守る防風林、街灯のない中を車のライトだけに頼って進む夜道……。
その自然を背景に、そこに生きる人達の生活と人間関係が丁寧に描かれます。農作物を育てる苦労。そして苦しいときに手を差し伸べる隣人たちの優しさはもちろんのこと、それだけではなく、ときには密過ぎる関係に息苦しさをこぼす登場人物たちがリアルです。

過去の体験からつい人に厳しくなったり、人間不信になったりして、きついことを言ってしまう人たち。割り切れない人間関係にはまってしまい、噂の種になってしまう人たち。登場する人物の豊かさと描写に、書き手が持つ人間性の深みと観察力の高さが表れています。

そして、それを乗り越えてまた新たな絆を結び直す人々を見て、私たちは希望と心の温もりを感じるでしょう。ぜひともたくさんの人に読んで欲しい作品です。


おまけ:
あと、ご飯がとても美味しそうです! 大根と薄揚げ (関東人には「薄揚げ」って言葉だけで既に美味しそうに思えます!) のお味噌汁や芋団子 (って知りませんでした。今度作ってみよう!) などなど。まるごとのロールキャベツとか食べてみたいです!

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