人の出会いは偶然でも、一緒に歩いた時間は、きっと必然。

 ただ静かにそこに在る自然、青春期の瑞々しい強さと弱さ、ほんの少しの生き難さを隠した笑顔……そんなステンドグラスを思わせる物語です。

 主人公の正人は、ノープラン&ノーヴィジョンで手作り家具工房を開こうとして、そのだいぶ前の段階で凍死しかける残念なイケメンさんです。
 正人にあきれながらも放っておけない世話焼き女子高生の美葉を始め、北海道の片すみで生きる人たちの輪が、正人を加えてちょっとだけ形を変えつつ、つながっていきます。
 過去と今と未来、閉塞感と安息感、ここではないどこかに向かう地図、変わっていく不安と変われない焦り、少年少女をとりまく世界は鮮やかで、すれ違う大人たちの背中も横顔も、深い印象を残してくれます。

 そして、なんとか二人で軌道に乗せた家具工房の岐路に立ち、お互いを見つめ直して、決断する正人と美葉……彼らに、心からのエールを贈りたくなるラストが秀逸です。

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