まさに青春。まだ原石の若者たちが瑞々しい。

北国ならでは自然の描写が美しく、そこに確かに息づいている人々の姿があります。流麗な文章で情景が描かれており、登場人物たちの心情も繊細に表現されていて、じんわりと胸に染みました。彼らの心が遠ざかったり、近付いたりしながら、心を通わせていく表現力は秀逸です。
家具職人や空間デザイナーなどの仕事についてもしっかりと描かれていて、素晴らしい。才能ある若者に説得力を持たせていることに感服しました。
 
17歳の美葉と、ほぼ生き倒れていた家具職人の正人が出逢って始まるこの物語。美葉の個性的な友人たちも加わり、彼女たちは困難に悩み、窮し、足掻きながら、それでも未来に向かって進んでいくのです。
彼女たちを支える大人たちの中でも、節子おばあちゃんが、それはもう温かで素敵です。きちんと年齢を重ねてきたのだなという、これまた説得力のある言葉をくれますよ。

この物語はシリーズの一作目。
美葉や正人たちの成長を描いた物語ではありますが、美葉と正人のまだ淡い恋を描いた物語でもあります。
二人の心が徐々に近付いていくさまは、もういっそ両方の背中を押してやりたくなるほど! 互いを支え合い、補い合う二人の姿は、ずっと見ていたくなりました。

ぜひ、北の大地で生きる若者たちの青春を感じてみてください。

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