無垢な少年と、死を待つだけの少女の出会いが、闇を祓って生命を紡ぐ。

 本作は、物語を彩る架空の花エルベット・ティーズ、純白の春告げ花のイメージが鮮烈なファンタジーです。

 エルベット・ティーズの紋章を亡き母親から受け継いで、父親の祖国と母親の祖国、二つの国を結ぶ王子である少年ファムータルは、残酷な仕打ちで死に瀕した奴隷の少女をみそめてしまいます。
 自らの魔力をふりしぼって少女を救ったファムータルは、少女のため、国と自身を蝕む呪いを祓うために、目覚ましい成長を始めます。

 その呪いとは、王族に連なる子は生まれる時に必ず母親を殺してしまう、というもので、これがゆえに国そのものが女性を使い捨ての道具扱いする意識に侵され、魔国とさえ称されていました。
 ファムータルは愛する少女と、信頼する二人の異母兄、母方祖国の祖父や仲間と共に、父王が残した闇に向き合っていきます。

 現代の男女問題も暗喩する作品世界に、胸が締めつけられる人もいるでしょう。
 また一方で、ねじれまくった性癖で彗星のように最速最短距離を燃え尽きる変態センセーとか、よくよく考えれば恋愛脳で突っ走ってDV夫とズブズブだったっぽいお母さまとか、クスッとして良いのかどうかわからない萌えポイントも楽しめます!(?)

 皆さまもエルベット・ティーズ、純白の春告げ花の香りを想像されての御一読、いかがでしょうか。