第7話 日曜日その2

山奥にある市営の温泉施設に到着する

ここも駐車場を取り囲むように木々がある、緑がきれいだ。


車は既にちらほらとあるが、まだ全然空いている

人が居ないと何故か嬉しくなるのが銭湯、温泉だ


貸し切りにならないかなと思って期待する

中に入ると発券機にて、お金を支払う

二人分買ってみゆさんに1枚渡すと自分の分のお金を渡された


まあ、彼女とかじゃないからね……奢られる義理はないもんね



「いつもどれくらい入るの?」


「んー普通ですかね?」


普通って何分だよ…30分とかか?

まぁいいか、まだ10時だから


「40分後くらい?」


「じゃあそれで!」


みゆさんと別れ、男湯に向かう


なんか少しだけみゆさんとの会話とか、一緒に行動が慣れてきた気がする

緊張が薄れてきたと言えば良いのか、それに変な期待とかも全然無くなってきて素の自分に近くなっている気もする


「いい傾向だ」


俺は一人呟いた


服を脱ぎ、いつものお風呂セット

歯ブラシに体を洗うタオル、髭剃りなどが入っているカゴを持ってお風呂場に入る



体を洗ってから、外にある露天風呂へ向かって行く


予想通り、まだ客が少ない


露天は俺一人だけだった


湯船に入ると思わず声が出る


「ふいー」


ああ、気持ちいい。一週間の疲れをここで溶かしていきたい


ぼーっとするのが幸せだ


風呂から上がったら、置いてあるマッサージ機に座ろう…


俺はしばし、一人の時間を楽しんだ


ここにはサウナが無いのが残念だ。まあ、その代わりに源泉かけ流しなのだが


温泉独特の匂いがとてもいい



そして、風呂から上がると真っ先にマッサージ機へ。


時間は少し早めに上がれたので、この200円10分のマシンが全力で堪能できる


ニヤニヤしながら座り、ちゃりんとお金を入れた


動き出すマッサージ機に身を委ねながら、目を瞑る


そう言えばみゆさんはまだ風呂の中だろうか?40分は短すぎたか?1時間にしとけば良かったかなあ。

みゆさん、俺と違って髪の毛長いから乾かすのにも時間がかかりそうだ


そうこうして、マッサージが終わると俺はゆっくりと起き上がる。


すると、テーブル席にみゆさんが座っていた


「あ、ごめん!待たせた?」


「あ、大丈夫ですよー。ほんとに今出たとこなので!マッサージ、気持ちよかったですか?」


見られてたのか……それにしても、普段はセミロングのみゆさんだが今は髪の毛をお団子にしている。


ヤバい、めちゃくちゃ可愛い。


「あー、気持ちよかったよ。もう習慣みたいなもんだけど」


おっさんだからね、俺は


「へえ、私あれ痛くて無理なんですよね」


「そりゃまだ若いから。いらんでしょ、マッサージ」


「あ、でも結構肩とか凝るんですよ」


「そうなんだ、揉もうか?……冗談だけど」


「え!うそ、冗談なんですか!かなり本気で揉んでほしいですよ……肩、ほんとに痛いので」


あー、まあ……セクハラにならんか?


「分かった、少し揉もう!ってかほんとにいいの?」


「ほんとにお願いします!」


俺はみゆさんの後ろにまわり、肩に手を置く


そしてゆっくりと、あまり強くならないように揉む


「ああああ」


「変な声出てるよ」


「うううう」


「痛いとか?」


「いえ、さいこーです、そこですそこ、首の付け根と、肩のはしっこ……あああああ」


結構面白い反応する娘だな……少し楽しい


三分ほど揉んだ所で辞める

あまりやると揉み返しとかあるみたいだしね、マッサージ慣れしてないと揉み返しきやすそうだしなー


「ふう」


「ありがとうございますー。んー、肩が少し楽になりました」


「そう?何か思って頼り全然柔らかかったからさ、凝ってる?ほんとに」


「え?そうですか?」


「うん、俺の肩と比べたらよく分かるよ。バカみたいに硬いよ、俺の肩」


そう言うと、みゆさんはじゃあ少し揉みます!とか言って俺を座らせて俺の肩を揉み始めた


あ、手小さいなあ……揉み切れないんじゃない?


「うおお、ヤバいです、やばい硬さですよ!これ!何これ!」


「俺の肩ですが?」


少しだけ揉んで手を離す


両手をぷらぷらしながら、みゆさんは笑う


「これ私なんかが、凝ってるとか言えないです」


「まあ、おっさんは、だいたい硬いんだよ……」


そして温泉施設を出て車に向かう


帰る頃にはお昼だな……


「昼ご飯、食べに行く?」


「行きます!」


俺は初めて、みゆさんを何かに誘った


断られないと言う自信があった


でも、みゆさんに何処まで踏み込んでも大丈夫なのか分からない


調子に乗ってはいけないのだ


そう、この程度は普通の事!みゆさんが友達かどうかも分からないけど、友達ゾーンには入っているんじゃないかなと思ったのだ


俺は少しだけ、本当に少しだけみゆさんに心を許したんだ


この人はきっと優しい。だから多分、俺が調子に乗らない限りはきっと俺は裏切られない。いや、傷つかない…はずだ


そこまで考えて、やはり俺は今調子にのっているなと思った


いかんな、あまり距離を縮めに行っては行けない…


だからまあ、この後の昼食で最後にしよう。


今日、何となく楽しかった、楽しまさせて貰ったお礼に、昼食をご馳走しようか



しかしみゆさんは直ぐにお金を出そうとする


だから、割り勘しにくい所に行けばいいかな?


焼肉とか、寿司とか


なんか前に焼肉は余程親密でないと行かないとか聞いた気するな。なら回る寿司でいいかなー



この作戦は功を奏した。


その後のお寿司で見事俺は奢ることに成功する


少しだけ作戦が成功した事に喜びが芽生えたのだった


そして、その後は解散する。


時刻にして三時を過ぎた頃に彼女を家に送り届けた


俺は自宅に戻ると布団の上にばさりと倒れ込んだ



ああ、本当に疲れた。でも、楽しかったなあ……


みゆさんほんとに可愛いし、明るい。

ご飯もよく食べる


好感度高すぎるだろおおお!?


何あれ、あの生き物可愛すぎるし天使か女神かなんかなの?


一緒に居ると精神汚染されて怖いんですけど!


俺はひとしきり悶えた後で、みゆさんに


「今日はお疲れ様、楽しかったです」



それだけ書いてメッセージを送った


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