第3話 金曜日
あの後のメールで、彼女をアパートに迎えに行くのも「いいですよ!」で返しておいた
集合時間は何故か8時半で、やたら早い気がする…
俺の本来の予定では朝10時に現地集合で、多分1時間とかで解散して帰るから、少し早い昼飯をとんかつ屋で食べて返って楽しかったなあとか思いながら寝るつもりだったのだ
それが
朝8時半にお迎えに行く
になってしまったので俺の休日プランが総崩れである…
ってまあ、その休日プランもDMもらって返信するまでの10分程で決めたんだけどね
まあ、昨夜あんな事あったから今日は仕事が手につかないな
デートじゃないと否定出来る理由はたくさん見つかったから、なんとか精神を安定する事が出来たんだ
そんで、とりあえず何のプランも決まらないまま昨夜は眠気に耐えられずに寝てしまったが…これ以上はあまり気にしない様にするか
精神衛生上よろしくない
あの子は可愛いんだ、そんな娘と遊べるんだからまあ良しとしようじゃないか
ポジティブに行こうぜ、俺
もしかしたらワンチャン付き合えるとか……は、ないが可愛い女の子のクレーンゲーム友達が出来ると思えばラッキーだろ
多分彼氏とかが出来るまでは遊んでくれそうだしなってか、なんで彼氏いない前提なんだよ俺はあ!
でも彼氏いんのにほかの男の車に乗って遊びに行く女の子とかやだなあ
まあ今の時代の若い人はそれくらいは普通なのかもしれないがな
今日はどうしようか?
そうだ、部屋を片付けるか
ずっと片付けよう片付けようと思ってて放置してたし。とりあえずダンボールがいるな、それにプライズ品とか色々綺麗に詰め込んでしまいこもうか。それで、部屋は広くなる
あれだ、俺は昔から試験だとかそういう前に部屋を片付けるタイプなんだ
明日の件に緊張しているのだよ、これは
楽しみにしてソワソワしていると言ってもいい
その逆で不安でたまらないと言うのもある
また、彼女は一体何を考えているのかも全く分からないというのも不安を増長させている一因だ
くそう、何やってるんだ俺は
もう39だぞ!見た目も中身もいいおっさんだろうが……
そう自分を見つめ直し考えると、また一つのアホな期待を諦める事ができて不安さが、減ってゆく。
そんな事を考えながら一日を過ごした
そして仕事が終わり、俺はホームセンターに寄る
段ボールとガムテを買っていつものゲーセンによる。これは下見だ
どんな景品が、どんな台にあるかをシュミレーションするために写真を撮って回る
もちろん店員さんに許可は頂いた
帰宅後、部屋のプライズ品の箱を段ボールに詰めつつ、SNSを見るとメッセージが届いていた
「お疲れ様です!お仕事終わりましたか?私はさっき、帰ってきましたよー。疲れたー!そう言えば、おにーさんはお名前なんて言われるんですか?私の名前は倉敷みゆりです!」
少しばかり顔がにやけた
多分今の俺の顔は気持ち悪い顔をしてるだろうな。
そうか、倉敷みゆりさんか……みゆ@クレゲって事は、普段はみゆとかって呼ばれているのかな?
そう思いながら文字を入力していく
「お疲れ様、そう言えば名前まだでしたね。名前は岡田 洋一と言います。仕事から帰って少しばかり部屋を片付けていました。取って放置してたプライズ品で足の踏み場がなくなってきてたので」
まあ少しばかりの片付けでは無いのだがね!
年末でもやんないレベルで汗かくレベルで部屋を片付けてるよ!
必死だよ!
とは書かない。落ち着いた大人だからね、俺は
それにしても、みゆりか…いい名前だなあ
ピロン
「あ、そうなんですね!じゃあ岡田さん……とお呼びします。私の事は、みゆとでも呼んでください!あ、明日為に携帯番号書いときますんで、登録よろしくおねしゃす!アパート着いたら電話したって下さい 080-0xx0-0x0x」
ふぐおおおおおおおおおお!
なんじゃこりゃああああ!
け、携帯番号だとお!
いかん、いかんなあ!最近の娘はけしからん!こんな簡単に携帯番号なんぞ教えたらあかんやろうが!
「て、言うことで」
俺はささっとスマホを操作してみゆの携帯番号を登録していく
てゆうかみゆって、みゆって!
「俺、なんしてんだろ」
その一言で、スっとテンションが戻る
ただ携帯番号を教えてくれただけ。そこにかかってくることは無いし、ただの連絡用だ
それに特別な意味なんてない
だから、期待なんてしてないんだよ、俺は
その後も黙々と部屋を片付ける
時折、ピロンとDMが届いたけどそれは彼女じゃない、他の仲良いフォロワーさんからだった
俺は彼女の事をつい、書きたくなったけど自慢みたいになるのが嫌だから書かなかった
だってそうだろ?
こんな39歳のおっさんに、若い女の子がさあゲーセンで話しかけて来てくれて
それで、なんかわからんけど土曜日に二人で出かけるんだぜ?
モテてるように思えるじゃん
でもさ、それって見ように寄っては彼女に騙されてるかもしれないとも、見えると思うんだよ
行くのは自由だけど、気をつけろとかさ
そう言われるよ
だって俺なら……友人がもしも俺みたいな事になってたら心配してしまうだろ?
リアルなおっさんてのはな、そんな奇跡みたいな事なんて起きないんだよ
だから変なことに巻き込まれないように気を張って生きてんだ
ああ、そう思ってきたら、明日が不安になってきた。
もしかしたらなんて言う、一縷の望みにかけておきながら
ダメだった時の、心の中の保険を借金してでも掛けるくらいに保険を掛けてさ、ガードしとくんだよ
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