第9話 月曜日

さて、毎週月曜日はすごくだるくなる

仕事のストレスがガンガン溜まっていく


取引先などで言われる、日曜何してたんですかという質問には温泉入ってました、日帰りですけどねと答える


すると誰と行ったんですかという質問に続いて

ああ、一人ですよ

そう答えるのだ


ここで話が終わってくれたらどれだけ楽なのか

だって本当はみゆさんと行っている。嘘をつく理由はないのだけれど、女の子と行ってましたとかいうのもね

この話は膨らませたくないんだ

どうせ、彼女とかそういう話になるのだから

ここで彼女ではないと答えても、彼女だと答えても


数か月後に今度は、あの時話していた女の子とはどうなの?みたいな話になって数か月後に苦しむのは俺だ


だってそこまで関係が続いているとも思えないからな


だけれど、その話をした後に思い返すのは昨日の出来事だ

お風呂上りの彼女は良い匂いがした。温泉備え付けの、俺と同じもので洗ってるはずなのに。あれは何故なんだ?

そして髪を上げた彼女はなんだかそう、色っぽかったなぁ


そんなことを考えながら過ごした


そういえば、昨日送ったメッセージの返事はない


スマホを取り出して、みゆさんの所を開くと既読にはなっている

だけれども返事はない

昨日から、送ってからずっと待っているのに返事がないのだ


まぁそんなものだ、やはり期待などしてはいけないんだ

そう画面を眺めながら自分を戒めていたところ


シュッ!


「あえ」


何か変な声出た!

まさかの彼女からの返信だ!?ナニコレ!シンクロニシティとかいうやつ?

俺が彼女の事を考えて居る時彼女も俺の事を考えて居るとか

双子のテレパシーみたいに思いが伝わったとか!


何てことはないだろ、ただの偶然だ。時間が12時だからね、昼休みなんじゃないかね!


そして俺は手で塞いでいた画面を見る


「昨日はどうもありがとうございました!めっちゃ癒されましたよー。あれは癖になりますね!朝からお風呂、最高です!しかもお昼ご飯も美味しかったー昨日は帰ったらすぐ寝ちゃってました」


そう返信が来た

そうかそうか、楽しかったら良かった

寝てたかー。まぁ俺も寝てたんだけどねー、夜中に目が覚めててさ、そこから頑張って寝たんだよ。おっさんだからね、長時間寝れないんだわ


で、返事。どう返そうかなぁ


というか、今返した方がいい?じっくり考えて夕方じゃだめかな…

すぐ返すと待ってたみたいになるじゃん

だから少し時間空けて返すか…


飯を食べて、仕事を再開する

月曜日だけあって案外忙しい

だからか知らないが、うまいことみゆさんの事はすっかり頭から抜け落ちていた

やはり仕事は偉大だね。


そして仕事が終わり、俺はゲーセンに向かう

実は月曜日は土日の反動かお客が少ないので、自由に台を選べるんですよ


それに週末を超えて、何がなくなって何が増えてるかチェックするのもある

場合によっては取りにくかったものが、取りやすくなっている事もあるし


ちなみに新プライズは入荷はほとんどない。大体、火曜とか木曜とかが多いイメージだ


店内をぷらついて、台をチェックしていく


ほほう、ここに移ったか…谷落としになったのなら狙ってみるのもいいな

爪の角度は‥それなりか

そうやって台を眺めていると


どんっと背中に衝撃がはしる

抱き着かれた!?


「だーれだ!」


この声は…

この声も何も、知り合いは一人しかいないわけで


「みゆさん」


「おお!正解!簡単でした?」


「そりゃぁね」


といいますか、背中に胸が当たってましたよ。柔らかかった気がする!あくまでも、気がするだけだけど


「岡田さん、返信くださいよー。既読無視はダメなんですからね」


「え?あ、そっか、メッセージ。ごめんごめん。後で返そうと思ってたから」


「まぁお仕事忙しそうですもんね」


本当は後で送ろうとおもって忘れてたんだけどね

すぐ返すと変に意識してると思われそうだし


「うん。そう言えばどうしたの?何か他にも欲しいものがあった?」


「いえいえ、ここ帰る途中なので。で、岡田さんいるかなーと思って」


「え、マジで?」


「というか、車があったので寄ってみました!」


なるほど、一瞬俺に会いたかったとか期待してしまったじゃないか。まぁ車は知ってるもんね、そりゃ見て来るか


「今日は何か取るんですか?」


「ああ、うん。とりえあえず2000円くらいで適当に取ろうかなと。新しいものはないから、持ってないのかなぁと…何か欲しいのある?」


「えーっと、あそこのやつ、取れます?」


そういって連れてこられたのは三本爪のクレーン

これは、やばいやつかもしれん

しかしぬいぐるみか…お?帽子被ってるな?あの隙間に爪入れれたらなんとかなるか?爪の先にゴムついてるし、これは簡単にしてあるな


「ちょっとやってみるか」


俺はコインを投入し、クレーンを操作する

この三本爪というやつは結構厄介だ。景品を寄せていくようにして、最終的に穴に落とす。だが穴の周りにはガードと言われるアクリル板があって、落ちにくくなっている


そして、そのアクリル板の高さで取りやすさが決まっていると言ってもいい


だがこのぬいぐるみのように、差し込めるような場所がある場合は違う

だから、こうやって…頭を滑って帽子に入れば…


入った!よし、持ち上げろ!そして運びきれ!


「凄い!持ち上がった!」


「いや、持ち上がるのは普通なんだ。これで落ちない様に運んでくれれば…」


吊り下げられたぬいぐるみは、ゆっくりと運ばれてきて、穴の上で止まる

あ。抜けない…

でも大丈夫だ、店員さんに言えば良い!


「すみません、これお願いします」


俺は店員さんを呼んで取ってもらう


「落ちなくてもいいんですね」


「そそ、ここまで来てたらゲット判定になるんだよ。店によって違うかもしれないけどね」


「へえー」


「はいこれ。あげるよ」


「ええ!良いんですか!ありがとうございます!」


そう言って彼女はぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる

喜んでくれて良かった。そしてずるいぞぬいぐるみ!俺ぬいぐるみになりたい!

体形は似てるからなんとかどうにかして間違えて俺を抱きしめて…くれるわけねぇだろ!


「いいよいいよ、他にもある?」


「えーっと、じゃあお菓子とかどうですか?」


「お。食いしん坊ですな」


「えー!女子はみんなお菓子が好きなんですよ!」


「了解だ」


そうして、俺は残ったお金を使ってお菓子も数点ゲットした


お菓子は多少、取りやすくなっているからね

それでゲーセンのお菓子ってプライズ専用だから変わったものが多いんだよねぇ


「今日もありがとうございましたー」


「そういえばそれ、持って帰れる?」


結構な量になってるけど…


「だいじょ・・・うぶです、たぶん」


「そっか、じゃぁ気を付けて帰ってねー」


そう言うと俺は車に乗り込んで、さっさと帰ったのだった

そして晩御飯を食べて、お風呂から上がった後に気づいた


あ。メッセージ返信してないわ


うえ、先にメッセージが来てる


「今日もありがとうございましたー!お菓子美味しいですよぉー!」


みゆさんの自撮り写真と一緒に封が開けられたお菓子が散乱していた

おおおお!写真ゲット!

俺はすぐさま保存する。可愛い!あと面白いな、この子!


そうそう、返信しないとね


「俺も楽しかったので、こっちこそありがとー。それじゃまた明日、おやすみ」


そう打ち込んでから、不要な文字を消していく


「俺も楽しかったので、こっちこそありがとー。おやすみー」


これでいい。


ああ、みゆさんのおかげでここ最近結構楽しいのは事実だ。きっとこの先、彼氏とかできてすぐに俺はお払い箱になるのだろう

それを想像するとすこしだけ寂しくなるけれど、大丈夫、今日の思い出だけで数年は生きていけるから

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