第8話 水曜日?
私の名前は倉敷みゆり 27歳
工場勤務をしている事務員
通勤には原付を利用している
出身はこの街ではない。この街の大学をでて、そのまま地元企業に就職したのがもう5年前
そこからずっと、この会社で働いて居る
最近、仕事帰りにゲーセンに寄る事が多い
まぁすることがないので、暇つぶし程度で行く
行くと二千円くらいを使うけど、ほとんど取れない…苦手だ。
でも取れた事もあるので、その時の感動をもう一度とやってしまう
好きなアニメのキャラのフィギュアとか、懐かしいキャラのとかが結構あるので私はついついそれらが欲しくなる
取ったら部屋に飾る
人に見られる様な部屋じゃないから飾れる
んーちょっと違うか
私の部屋に来るような人はいないので、気にしなくていいだけだ
週に何度か、行くんだけど行くとかならず一人のおにいさんがクレゲをプレイしている所に遭遇する
おにいさんっていうよりおっさんかもしれないけど、まぁ私ももう結構おばさんだからねぇ、だからおにいさんと呼ばせてもらおう
おにいさんはクレゲが上手い
数百円で1個取ってしまう
取る物を選んでいるようには見えるけど、次々と取るものだからもしかしたら持っていない物を探しているだけなのかもしれない
それくらい、いっぱい取っている
いいなぁ、私には出来ない事だから、凄いと正直に思った
というか、おにいさんも私と似たような境遇なのだろうか?
似たようなと言うと失礼かもしれない。友達も少なく、彼女とか、いないとか?
でも男の人は基本モテてる気がするので、私とは違うかもしれない
だって私、今まで誰とも付き合った事なんてない。
中学と高校の時好きな人に告白したことはあるけれど、こっぴどくでもない、普通に、あくまでも普通に、なんの事もない様に振られたのだから
ゲーセンに行くといつもおにいさんを探すようになっていた
だって、あんなに難しいのにぽんぽん取っちゃうんだよ!
見てるだけでも面白い
もっとそばで見たいなぁ…どうやってるんだろう?
なんなら録画とかして延々と見たい。
そんで何なら、私の欲しいやつ取ってくれないかな…
あ、取ってくれなくていい。自分で取りたい…けど、取れないから…
ある日、新商品が入っているのを見つけた
懐かしいキャラのフィギュアだ。
台の背面に在庫みたいに積んであるんだけど、もうあまりない
やっぱ人気だよね!
欲しいなぁ…でも、取れそうにないんだよね…
お金が勿体ないとか言うよりも、とことん沼るとイライラしちゃうんだよね
ゴトン
振り向くと、いつものお兄さんが居た
あ、取れたからにやにやしてる。機嫌も良さそう
・・・・・・・
そうだ、頼んでみよう!勇気だせ私!
ゆっくりと傍まで行くと、私は声を振り絞る
「おにーさん、さっきから見てましたけど上手ですね!」
そうです、私はあさましい女なんです!声かけてるのも下心が満載というか、下心しかないのです!
するとおにいさんは
「ああ、結構お金使ってるから」
そう言って少し照れた気がする
そりゃぁ…来るとほぼ必ずいますもんね。毎日だと結構お金使ってますよねぇ…
「良かったらちょっと教えて欲しいんです、てゆうか手伝ってくれません?」
そう、下心爆発ですよ!
「いいですよ、でも取れるかどうかはわからないですよ?」
おおおお!いいんですか、いいんですか!いいんですね!
行きましょう!今すぐ行きましょう!
「大丈夫です、こっちなんですけど」
そういっておにいさんを案内する
台を見ておにいさんは、納得した様な顔をした
「えっと、まず左のアームを引っ掛けようか」
「どうやるんです?お金入れるのでやってください」
そう、私は怖いのです。自分でやりたいけど取れないので!
だからお願いします!!
私がコインを投入するとおにいさんはボタンを押して操作をはじめた
凄い‥ほんとにギリギリの所を攻めてる‥正確すぎやしませんか?
「これでくるっと回ったら、持ち上げる感じで」
そして夢中で見ているとすぐにその箱は重力に従って落ちた
ゴトン!
「うわあ!凄い!流石ですね!ありがとうございます」
これはぞくりとしますね!いとも簡単に取りましたね!?
「ああ良かった、取れて」
「えへへ、これ好きなんですよ」
きっと私はだらしない顔をしているに違いない
でも嬉しいんだもん!
「そうなんだ、良かったね」
それだけ言うとおにいさんはすたすたと行ってしまった!
おおおい!ちょっと待とうか!?まだお礼も何も言ってないよ私!
きょろきょろと探すと、店外に出るのが見えた
まずい、帰っちゃう!
私は走って追いかける。店の入り口にある自販機で、残った小銭を投入して適当に缶コーヒーを買う
そんで駐車場の車の中でたばこを吸っているおにいさんを発見!
よし、まだ間に合う!
私は車の窓ガラスをコンコンと叩くと、おにいさんが気が付いた
窓がうぃーんと開いて
「ブラックですけど良かったですか?さっきの御礼です!」
私は缶コーヒーを差し出す。どうぞ!こいつぁ貢物です!
「え、いいのに」
いいえ、遠慮は要りませんよ!貢物なので!
「だいぶん安くゲットできたので!それにまた助けて貰いたいですし」
ふふふ、そうです、神に頼むには貢物が大切なのですよ!おにいさん神!
するとふと、スマホの画面が目にはいる
あ!あのSNS使ってる!私も使っているやつだ!これはお近づきにならねば!
「あ、SNSしてるんですね!フォローしていいですか?」
「ああ、いいよ」
おおお!これでお近づきになりますよ!
「えへへ、また何かあったらDMしますね!」
すまない、神おにいさん…私はあさましい女…また御指南お願いしたいのです!というか取って!お金は出すからぁ!
その日アパートに帰ってから、取ってもらったフィギュアを飾る
「うーん、懐かしいね!結構いい造形してるじゃないか君ぃ」
これはホントに家宝ですわね!
「それにしても、おにいさん優しかったなぁ…」
そしてスマホでおにいさんのSNSを見る
おお、すげぇっす。ほんとにいっぱいとっておられますなぁ…
つらつらとスマホを操作していると、いつの間にか私は寝ていたのでした
その日私は夢を見た
あのおにいさんと一緒にあのゲーセンでクレゲをする夢だった
私はおにいさんの手を握って、こっちも、こっちもと引っ張りまわす
けどやっぱり優しくて、わがままな私に文句も言わずに付き合ってくれる
景品でいっぱいになったビニール袋を手に、私はすごく幸せだった
おにいさん本当にありがとう!
そう言って別れる。おにいさんはすごい勢いで車に乗っていく
そして、私は原付のカゴにその景品が入らなくて、どうやって帰ろうと絶望したところで目を覚ましたのです
「おお…めっちゃ取れてた、私!」
夢の感想がそれである
またお店で会ったら、もっかいお礼言おう!
さて、寝なおしますよー
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