第11話木曜日?
私は今日もゲーセンに行くつもりだ
昨日、ついにおにーさんに話しかけてしまった。
仕事以外で異性に話しかけるなど我が人生で初ではなかろうか?はっはっは!
いやぁ、優しい人で良かったよ
「倉敷さん今日期限いいねーなんかあったの?」
「ええ、ちょっとだけほしいものが手に入ったので」
「へぇ、そりゃうれしいだろうね。てことで悪いんだけど、ちょっとだけ残業お願いできない?」
「え…?」
「露骨に不機嫌な顔になったね…ごめん、ほんとに急ぎで処理しないといけないから」
「はぁ、わかりましたよ…」
くそー、ゲーセン行くつもりだったのに!遅くなっちゃうなぁ…
そこをなんとか仕事を終わらせて、私は原付にまたがりエンジンをかける
がんばったおかげで、結構早く終わった
途中、コンビニでお菓子を買ってからゲーセンへと向かう
駐車場を見ると
あれだ、あった、お兄さんの車だ
今日も話しかけられるかなぁーちょっとだけどきどきしちゃうじゃん
入口までいくと、ポスター?手作り感ある…張り紙かな?
それを見ているお兄さんを発見!
しかし手には景品の入ったナイロン袋を持っている
あー。間に合わなかったか。取れる瞬間を見るの好きなんだけど‥
もう帰るところかな?
でも会えた。
それに私は少し機嫌がよくなる
よしっ、この勢いで行こうとお兄さんのそばまでいくけど、張り紙に集中しているのか気づかれない
あわよくば話しかけてもらう作戦失敗
し、しかたねぇ…
「おにーいさん♪」
私は勇気を絞り出して話しかける
「お、今来たの?」
うん、今着ました。でもお兄さんもう帰るところなのでゲーセンには用はないかな?
「いえ、もう帰るとこですよ!何もとれませんでした。おにいさんは……あ!なにゲットしたんですかー?」
嘘だけどね!
今来たとこだけど!
「これと、これかな」
おおおお!こいつはすごい。
ちょっとそれ、昨日の私のと対になってるやつじゃないですか…
「うん?良いなあ!これ私も欲しいやつです」
そういうとお兄さんはすぐさま言った
「ああ。なら、これあげようか?」
え?いいんですか?
「え!本当ですか?ありがとうございます。もうこれ家宝にしますね!」
「君んち家宝が多そうだねえ」
「あはは!そうなんですよ、家宝ばっかりです!」
もらえるなんて思ってなかったからものすごく嬉しい
私は自然と笑顔になる
「じゃ、俺もう帰るから」
「はい、ありがとうございました」
そう言うなりお兄さんは車まで駆けるように行ってしまった
なんか、お礼が言い足りない
そんな気持ちになる
何を見ていたんだろ?
見るとそれは里親募集の張り紙だった
それにはかわいい子猫が数匹写っていた
私は背中のリュックにそれを納めると、バイクに乗って帰る
走りながら、あの張り紙を見ていたお兄さんの真剣な横顔を思い出す
猫、飼いたかったのかな・・・
いいなぁ猫…
子供のころ、ちょっと汚れた白い猫を飼っていた
こたつに入るたびに、頭ごと突っ込んで猫を触って居た事を思い出す
うちに帰って、もらったフィギュアを飾る
うん、絵になるね!
何とも言えない満足感が生まれた
そうだ、お礼!
DMおくっちゃおうか!
でもなんて?
ありがとうは基本だよね…
それと…お兄さんみたいに景品を取りたいな‥‥
教えてもらえたらありがたいけど…
「今日はどうもありがとうございました!またお礼しますね! ところで土曜日はお休みですか?良かったら一緒にゲーセンに付き合って貰えませんか?」
そう送ってしばらく待つ。
全然返事が来ない、なんかめっちゃそわそわする!ああ、どうして私あんな文章送っちゃったんだろ!?
よく考えたらデートの誘いみたいに思われるんじゃないだろうか!?
おいおいおい、みゆさんや、考えなしに送っちゃったねえ?
ばかなのかねぇ…
と、そこまで考えて冷静になる
まぁ、高校生みたいなこと考えちゃったよ。私はもう大人じゃん
そんな深い意味もあったわけじゃないし、お兄さんも大人だからきっとそんくらいわかってくれるよね!
んなわけないじゃなああああい!
あーあ、やっちまったよ。嫌われちゃったかもしれねぇよ
いきなりデートに誘うような軽い女だと思われちゃったよ
それどころかきっともう返信はこないし、ゲーセンにすらお兄さんはもう現れない気がするよ
あーあ、なんか泣けてくる
ピロロッ
そんな私の気持ちも考えずにスマホはDMの着信を知らせてくる
震える手で、スマホを操作すると
「良いですよ、何時にどこ集合でしょうか?現地でいいですかね?」
おおお!お兄さんGJ!GJだよ!
さすが!察していただけましたかね!私の気持ちを!
テンションが上がったまま即返事を返す
「朝オープンから行きたいですね!集合場所ですか……そう言えばどの辺に住んでいるんですか?」
今度はすぐ返事が来た
ピロロ
「俺は〇〇に住んでますよ。オープンからなら10時に現地でいかがです?」
ほうほう!
結構近いとこ居たんですねぇお兄さん
ぬりゃ!DM送信!
「あ、そうなんですね!すごく近いですね!私は〇〇のアパートに住んでます。良かったら車に乗せて行って貰えませんか?私原付なので」
するとこれにもすぐ返事が
「いいですよ!」
おおお!ひゃっほう、これで約束がとれましたなぁ!
うんうん、楽しみだね、土曜日!
そのテンションで、私は当日まで気づいてなかった
これ、本当にデートみたいじゃないかと…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます