第15話火曜日?

「おはようございます、今日も頑張りましょう!(はーと)」


それを朝から彼に送信


気持ち的には、くらえ!って感じで送信!

ふふふ・・・そのはーとは私の気持ちです。今日、どうなろうとも告白してやる


昨夜あまりにもいろいろ考えすぎて寝れなかったから少々テンションたかいけど


そしてさらに追撃する


「今夜ご飯食べにいきませんかー?パスタ、食べたいです!でも一人で行くのはちょーっと辛いので一緒に行ってくれませんか?」


それにはちょっと置いてから、返事が来た


「いいですよ」


はい、かかった!もう逃がしませんから!


その日の仕事はここ最近でも一番集中してできたと思う


佐藤さんからは


「覚悟したって顔になってるよ。今日、うまくいくといいね」


そんなことを言われた


この人は本当に私の顔から情報を得すぎです


しかし


「はい」


素直にそう返事が出来た


私は予感している


この時を逃せば、あの人を逃せばきっともう恋なんて出来ない

なんせ27年間もちゃんとした恋人なんていなかったし、ここまで好きになるってこともなかった


昔付き合ってた人も、告白されたから付き合っただけ

それも、キスしたら満足したのか振られたし


後で聞いた話、何人とキスできるかなんて事をしていたらしい

ほんとサイテーだと思った、でも中学生なんてそんなものなのかもしれないとも思った


あの時以降、私は現実の男を見なくなってた


今まで何人か、私の事が好きだから付き合おうと言ってきた人がいたけど

二度と付き合わないと決めてた事もあって付き合うことはなかったし

一緒に遊びに行くこともなかった


結構寂しい大人時代を過ごしてたんだね

でも、寂しいとかそんなのは一切なくて結構楽だったけど


岡田さんと出会って一週間、毎日楽しかったです


どんどん楽しくなって、もう決壊したダムみたいに溢れるように全てを巻き込んで


私の気持ちは好きで溢れてしまった


気づいてからはもう、とどまることを知らない


そして私は思ったら行動する


「絶対、好きって言う。付き合ってほしいって言う」


仕事終わり、ロッカーを閉めながら言った


自分自身に言った


不安がないわけではないけど、土日月の雰囲気からは大丈夫だよね、と思う


うん、きっと、大丈夫



私は急いで家に帰った



最近の、いつもの様に彼が私のアパートに迎えに来てくれる

ギリギリまでおめかししているとスマホが鳴った


鍵をかけていそいそと外にでるといつもの場所に彼がいた


見ると一気にテンションが上がる


やばい、胸痛い


でも、幸せな痛み


車のドアを開けて


「お待たせしました!」


「あ、待ってないよ。んじゃ行こうか」


そんな感じで車は走り出す


楽しい、すごく楽しい


目的地について、パスタを頼む。

待ってる間、普段なにしてるんですかとか

今日どうでしたとかいっぱい質問してしまう


そうか、これが知りたいということか…


そして料理が運ばれてきて食べ始める


相変わらず美味しそうに食べるなぁ…

そう思ってたら


「好き」


おっと、思わず口から出ちゃった


けど全然気づかれてない。もー!気づいてよー!

なんちゃって


そしてお会計して、外に出るとき私は彼の腕に手を回す

ふああ。


幸せだあ。抱き着きたい!


でもあれ?なんの反応もない?あれえ?


すっごいなんか真剣な顔してるなぁ…ううん?


車に乗り込んだ後も、なんというか変な感じだ


なんだか楽しくなさそうな感じ…辛そうな…え?いや、なの?

私は思わず聞いてみる



「あ、岡田さん」


「ん?どうかした?」


「いえ、今日なんかあまり楽しそうじゃないですね?」


「いやそんなことないよ?すげぇ楽しい」


え?そう?

大丈夫なの?そうだよね、大丈夫だよね!?


ならば、行きますよー覚悟してください…ふふふ!

頭の中に幸せが満ち溢れる

これでずっと一緒にいられるんだ



喉がカラカラに乾くけど振り絞る



「えっと、あのですね岡田さん…私と…」


「私と?」


「付き合ってください」


ハイ言った!

あー!言っちゃった!


私は返事を待つ


その間、彼の、岡田さんの表情を真剣に見る


だけど


その時の彼の、心底嫌そうな表情で


なんとなく、察してしまう







あ、だめだこれ。






私何をそんなに舞い上がっていたんだろう

どうして付き合えると思ってたんだろう


アニメとか漫画とか小説とかドラマとか映画とかみたいに


どうしてハッピーエンドになると思ったの?


楽観的過ぎた


私はいつもこうだ。都合のいい妄想ばかり

一人で過ごす時間でそれがおかしいだなんて思ってもなかった


いつも妄想ばかり、それもハッピーエンド


それが現実になったことなんてないというのに


無言の時間が痛い


だめ、耐えられない…


そう思ってた時、聞こえた彼の声


「ごめん」


それだけでもう耐えられなくなって、すぐに車のドアを開けて走り出す


「ふぐううっ!」


涙があふれ出る、いやだ、辛い、死ぬ、死のう、もうだめだ、好き、好き、だけど彼は私の事が好きじゃなかった


もう嫌だ



走ってた。どこでもいい、あてもなく走ってた

この涙は見られたくない

きっとすごくぶさいくな顔をしてる


だけど今日に限ってヒールなんてはいてるからちゃんと走れない

後ろから彼が追いかけてきているのはわかったけど、止まりたくない、顔も見たくない


でも、そんな追いかけっこはすぐに終わりを迎えた



キィーッ!



車の急ブレーキの音が、後ろから聞こえた


え?と思って振り向くとすぐそこで


止まっている車と、その前に倒れている彼が



車に轢かれた岡田さんが目に入った



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