第6話 日曜日その1

眠れなかった……


唯一の癒しである日帰り温泉になぜかみゆさんと行くことになってしまった…


確かに一人で行くつもりだった、だから構わないんだ

俺もね、人生経験豊富なおっさんだけどさ、それでもこう期待とかするわけよ…

だって男と二人で日帰り温泉なんか行くなんて好意でもなければ行かないと思うんだよ流石に!

クレゲ教えてとは訳が違うんだ……


まあ、色々と、予防線はったよ?


「良いけど、あまり遠くにはいきませんよ」


とか


「本当にお風呂入って帰るだけですよ」


とか


本当は身の危険感じないの君は!とか、男と二人で温泉とか行ったら、親御さんが心配するぞ!とか言いたかったけどほら、逆読みするとこれってさ、


一緒に行って俺に襲われても文句いわないでね


という保険に取られてもやだし、なんか俺が親みたいな感じだから止めたけど!


それでも二人きりはなあ……好意がないとなあ……と言う結論にしかならない。


真実は違えど、脳みそお花畑の俺にはそう思えてしまうわけですよね


だからこそ、その違うはずの真実を求めて思考の海に飛び込むんですわ!


こういう時は多分俺の思考は間違えているのだから、今まで散々そのご都合が宜しい結論が間違えていて辛い思いだけをしてきたのだから。




しかし現実は本当に読み切れない



それも俺はようく分かっている


午前9時過ぎ。今日は朝食は食べて来いこうと言った

昨日犯した過ちはもう犯さない、俺は学習するおっさんだからだ



「よいしょっと、おはようございます!」


「おはよう」


「あさ風呂ってどんなんですかねー楽しみです」


「行ったこと無いの?」


まぁこんなのおっさんの趣味だしなぁ

日曜朝から日帰り温泉。今日行くところは食堂はないので近くの道の駅とか、街まで戻ってきて食べるしかない

だから目的はお風呂と設置されているマッサージ機くらい


おっさんはめちゃめちゃ楽しいけど、それが女性も好きなのか分からない

一度第三者の意見を聞いてみたいところである

みゆさんはきっと楽しかったしか言わないだろうし


あ、みゆさんと心の中でも呼ぶようになった。彼女だとほら、お付き合いしている彼女とダブってしまうからちがうだろぉ!ってなるだろ?


だから名前にしておいた

さん付けるのは許してほしい。これこそが俺とみゆさんの距離感なのだから



「ええ、昼とか夜に行ったことはありますけど、朝からっていうのはないんですよね。だから結構たのしみなんです、最近は全然行ってなかったですし」



そう、彼女はここ数年仕事が忙しかったりで温泉は好きだが、行けていないので行きたいと言ってきたのだ


既に行くと公言してしまっていたので断るわけにもいかないので連れて行く事になったというわけだ


変に意識していると断るとかノリノリで行くとか思われそうなので、仕方なくといった体をかもしだしつつ、一緒に行くよとなった


我ながらめんどくさい男だと思う


でもこれしないと生きた心地がしないのだ


「へぇ前は家族と行ったの?」


「いえ、友達数人とですね。その頃は会社に仲のいい子が居たんですけど、結婚とかしたので一緒に行くことが無くなったんです」


「あーなるほどねぇ。わかる、わかるよ。俺も昔は友達数人と遊んでたけど、30超えたあたりからかなぁ、みんな家庭を持ってさ、だんだん一緒に遊びに行くことはなくなったかな。仲が悪くなったとか、そう言う事はないんだけどやっぱり家族を優先するようになるじゃん」


「そうですよねぇ。そういえば、岡田さんは結婚とかしないんですか?」


はい、そう来ましたか。

君ねぇ…俺が結婚なんて出来ると思うか?そんなものは来世に期待してくれって感じだろ?見てわかんねぇかね!


「彼女すらいないのに?」


「ああいえ、そういう願望とかないのかなと思って」


あ、そう言う意味で言ったのね

ごめんごめんおじさん勘違いしちゃったよ。喧嘩売られてんのかと思ったよ


「そういう相手がもしも、万が一いたらねとは思うけどさ、無理じゃないかなぁ」


それだけ言うと車内を沈黙が包む


いたたまれなくなって俺は


「みゆさんこそ結婚とかどうなの?願望とか」


「うーん。まず相手居ないですし、結婚したいとは思いますけど私なんかが結婚生活送れるとも思えないんですよねぇ‥」


それはどういう意味なんだろうか。

これも一般的にどういう意図で言っているのかアンケートを取ってみたいくらいにはわからん。

とりあえず彼氏はいない、でも結婚はしたい、だけど自信はないってことでいいんだろうか?


俺の経験上だとこれは


好きな人は居ます。出来たらその人と結婚したいです、でも付き合っても居ないので期待はしていません


そう言う翻訳になるのだが


ちなみにこの場合の好きな人ってのはもちろん俺なんかじゃなくて、きっと同僚とかでイケメンなやつなんだろうなとおもう

あと幼馴染とかさ


車はどんどんと山のなかへと走り進んで行く

谷間を、渓流をみながら進む


俺は毎回この景色を見ながら行くのが好きだ。今は夏だから緑で溢れているが、季節によって変化する景色は飽きない


「この道さ、冬場だと両方の木がね、雪とかで雪柱みたいになるんだよ。けっこう綺麗だから写真撮ってる人もいたりするんだよね」


「ええ、そうなんですか?見てみたいです!」


「あー、まぁあと半年後だね」


「そうですよねー」


「でもこの後は紅葉がはじまるよ。それはそれで結構綺麗みたいだよ」


「そういえばテレビとかでもやってますよね、紅葉シーズになると」


「ああ、やってるね。人が多いから俺はあんまり見ないんだけど、車から降りてそこの渓流に行ってる人とかいるなぁ」


「それも見てみたいですねー」


「あんまり見にいったりしないの?」


「だって原付ですもん、行動範囲狭いですよ、私。普段夜遊びに出たりもしないですし…何年かに一回くらい、同僚と県外旅行するくらいです」


そうなんだ、俺がみゆさんの年の頃にはと言いかけるがそれは老人みたいなので止めた

少しづつみゆさんの情報が集まってくる


これが人を知るってことなのかなぁ

てゆうかまだ出会って数日なのに、一緒に行動してるのってなんかおかしくね?









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