緑の香りがする物語

 お茶会、アップルパイ、恋愛と、甘い匂いのする単語が並ぶ物語なのですが、どうした訳か、私には甘い匂いよりも強く感じる歌織がある物語でした。

 緑の香りです。

 果樹園のリンゴの木、それらが立つ土の香り…そんなものを感じるくらい、爽やかな物語に感じられました。

 恋愛というジャンルには、ある程度以上、神様に贔屓された男女でなければ回せない物語が多い中、この物語、特段、容姿が優れている事を表す言葉が少ないところにも好感が持てます。

 それは恋愛が特別なモノではなく、青春時代に於ける一コマである事を思わせると同時に、大切な事であり、美しい事であるとも感じさせるからです。

 木々の緑と空の青さ、それにリンゴの赤がよく似合う、そんな物語です。

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