スキル【すらいむのきもち】
腹を凹ましたことで辛うじてスキルの書を拾い、何のスキルか確認してみる。
【すらいむのきもち】
またしても達筆で書いてある。
スライムの気持ちかー。これは何となく想像できるな。
多分、スライムが何を考えてるか分かるやつだな。アイツら竜なクエストに出てくるアレの顔無し版だからなぁ。普通は何を思ってるか分からんもんな。
でも最弱モンスターのスライムの気持ちがわかったところで意味あんのか?
毎回フルボッコにされる彼らの気持ちが
『やめてくれ!俺には妻と子供が・・』
『くっ!殺せ・・・』
『悟空ううううううう!』
とかだったら絶対嫌なんだけど?
最後のやつとか無駄に爆散されてるしな。俺はFじゃ無いっつーの。
超絶地雷スキルじゃね?
まぁ上手くいけば手懐けて、仲間になる可能性もなくは無いけど。テイムスキルみたいな感じでさ。
その代わりスライム限定のテイムスキルだけど。
まぁテイム出来るかもだし、一応取っておくか。
とりあえず先程と同じように巻物を開くと煙が出てくる。
相変わらず煙たいが、これでスキルが取れただろう。最後のは楽しみに取っておく事にして、先にスライムのところに行ってみるか。
最後のスキルの書に書いてる文字を見ないように腰に巻いてあるポーチに入れる。
デブだからそこが果たして腰かはわからんけどな!
さて、とりあえず1層に行こーっと。
危険地帯(俺の場合)である3層を抜けて2層、1層へと至る。
途中ゴブリンに襲われかけたが、ピザを1ピースだけ出して、ゴブリンにあげると喜びながら食べてた。
その隙に逃げ出して、腹は減ったが、無傷で1層に辿り着いた。
それじゃ、スライムちゃんはどこかな〜?
周りを良く見ながら、スライムを探す。
お!?第一スライム発見。
では早速近寄りますかね。
見つけたスライムに近寄ると、スライムから声が聞こえてきた。
『うわっ!めっちゃデブやん!』
それを聞いた瞬間イラッとした俺は容赦なくそいつを踏み潰した。
スライムにまでバカにされた!!
思わず踏み潰したが、後悔はない。
寧ろ、ざまぁwwwって感じだ。
俺はデブだからな!俺に踏みつけられるという事は普通にやられるよりも重さを感じながら逝くって事だ!
少し傷付いたが、気持ちを切り替えて他のスライムを探す。
第二スライムを発見。だが、知らない探索者にやられかけているようだ。
近寄ると、何やら聞こえてくる。
『くっ!こんなところで私は死ねないの!!スライム族の希望なんだから!』
なんかスライム達にも事情があるらしい。
こういうのが聞こえると失敗したなって思うわ。
アレ絶対に死ぬフラグ立ってんじゃん。
どうしよっかな・・。
聞こえちゃったし助けるか。
今にもとどめを刺そうとする探索者に声をかける。
「すみませーん」
「はい?」
こちらを向いたのは、まだ若い女の子だ。
おそらく探索者になったばかりであろう。
「そのスライムなんですけど。俺の従魔なんですよ?殺さないでもらっていいですか?」
「ええ!?すみません!そうとは知らずに倒すところでした!どうぞ!連れて帰ってください」
女の子がペコペコとしながら謝り、去っていった。
助けてみたはいいものを、これどうすれば良いんだろ?
スライムの方を見てみる。
『くっ!殺せ!こんなクソデブに助けられるなんて・・。一族の恥だわ!』
マジ腹立つ。お前らだって似たようなもんだろ。寧ろスマートなスライムとか弱そうだわ。
「お前さ〜。助けてやったのにそんな態度取るなら踏み潰すぞ?」
『え!?私の声が聞こえるの!?」
「バッチリな。お前がクソデブって言ったのも聞こえてるから」
それを聞いたスライムはプルプル震え始める。
『それは・・。仕方ないでしょ!?アンタめっちゃデブだもん!」
傷付くわー。
なんなのこいつ!?開き直りやがって!
「はい。じゃあ俺がお前を潰しまーす」
『う、嘘よ!いや、デブって思ったのは本当。でも助けてもらったのに酷いこと言ってごめんなさい』
殺されると思ったからかどうかは知らんが、急にシュンとしながら謝るスライム(♀)
メスだよな?喋り方女っぽいし。
「まぁいいや。言われ慣れてるし、自分でもデブの自覚あるし。そんで?お前らって何か目的でもあんの?」
『何でそんな事を聞くのよ?』
「だって一族の希望とか言ってんじゃん」
『それも聞かれてたのね・・。わかったわ、話す事にする』
神妙な雰囲気を出しながら、言うスライム。
ぶっちゃけ気にはなるけど、聞いても聞かなくてもどっちでもいいんだけど。
『私たち、ダンジョンモンスターにはそれぞれ目的というか、やらなければいけないことがあるの』
あー。語り始めちゃった。
これ長くなるかな?
『それでその目的を達成しないと私たち一族は淘汰される運命になるのよ』
うん。短かったな。その方がいいけど。
「んで?目的って?」
『それは・・・。私たちスライムの場合は進化をして強くなって深層に住むようになる事』
「あん?深層に住んでどうか何の?」
『深層に住む事で、人間が現れる確率を下げないと、私たち一族は最弱だからこのままだと人間に滅ぼされるのよ』
あー。繁殖が間に合わないのかな?
たしかにスライムはゴブリンよりも弱いくせに、そこまで大量にいないもんな。
「ゴブリン達は大丈夫なのかよ?」
『あいつらの繁殖スピードは神がかってるもの』
そんなところで神がかりとか言う比喩を出さんでほしいわ。
神様達がめっちゃセックスしまくってるみたいじゃん。
「そんで?お前らは繁殖が遅いわけ?」
『私たちは基本は力を蓄えて、分裂するの。他にもちゃんとした繁殖のやり方はあるんだけど・・』
「どうやんの?」
『それは・・・』
繁殖方法を聞くと、何故か黙り込むスライム。そんな事されたら余計に気になるんだけど?
スライムがなかなか話そうとしない為、先を促す。
「それは?」
『・・・。人間と性行為をするの・・」
「はぁ!?人間とヤるのかよ?」
『そうよ!悪い!?私だって嫌よ!だって私はスライムキングの娘、姫騎士のシャルなのよ!?』
いや、知らんけど。
スライムキングも姫騎士ってのも今初めて聞いたわ。
てか何それ?
コイツって、くっころ系姫騎士スライムって事?
スライムじゃなければ、俺の容姿も相まって
完全に薄い本の展開が想像できるけどな。
あー。自分で言って悲しくなったわ。
「はぁ。それで?何でまたキングの娘が1人でいんの?」
『それは、強くなって分裂しないといけないから修行しようと・・』
「それで殺されたら意味ないわな」
『うるさいわね!私がどうにかしないとダメなの!!』
「キングどうしたよ?」
『お父様は・・。腰痛で療養中で・・』
おい。スライムのどこに腰があるんだよ?
全く理解できん。
シュンとしているシャル(スライム)を見てると、なんか可哀想になってきた。
「じゃあ俺とヤるか?」
『はあ!?アンタバカでしょ!?何で私がアンタみたいなデブに股を開かなきゃいけないのよ!?私はそんなに尻軽じゃ無いわ!!』
コイツ腹立つなー。大体お前に股も尻も無いだろうが!
一々人間臭いこと言いやがって。
まぁ俺のようなデブとヤりたく無いのはわかるが、世の中にはデブ専というローファンタジーも存在しているんだぞ!
「わかったよ。それじゃ、俺と一緒にダンジョンに潜って、お前を強くすれば良いだろ?」
『何?協力してくれるわけ?』
「まぁ乗りかかった船的なアレだよ。俺も1人では限界を感じてたし、ちょうど良いだろ?」
『見返りに私の体を狙ってるんじゃ無いでしょうね!?』
うざっ!スライムのお前に魅力を感じるのは、一部の変態だけだっつーの!
「狙ってねーよ。それでどうするんだ?」
『・・・。わかったわ。アンタと一緒にダンジョンで強くなる事にする』
「そうと決まれば、一旦ダンジョンを出て従魔登録するぞ?」
『それをしたらどうなるの?』
「従魔登録して、従魔ってわかるように協会から貰えるアクセサリーを付ければ、人間に襲われなくなるんだよ」
『なるほどね。わかった!これからよろしくね!』
「おう。そんでお前の名前はシャルでいいんだな?」
『そうよ。アンタは?』
「俺は
『名前だけはイケメンね』
クソ!スライムにまで言われるとは!?
俺の親のネーミングセンスを呪うぜ。
『まぁでもデブだけど、私はアンタのこと嫌いじゃ無いわよ』
「それはどうも」
まぁスライムに嫌われようがどうでもいいけど。
俺たちは揃って出口に向かい始めた。
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