スキル【もんすたぁ】

ダンジョンに入ってすぐにスキルの確認をしようと立ち止まる。


『ちょっと!なんでここで止まるのよ!?』


赤色のリボンを頭の尖った部分にちょこんと付けたシャルが文句を言う。


「さっき言ったろ?スキルの書を確認したいって」


『言ったけど、まずはレベル上げましょうよ!』


「まぁまぁ。すぐに終わるからさ」


『まったく!早くしてよね?』


忙しない奴だ。スキルの書を使うとかすぐに終わるのに。


肩に乗せたシャルを少しだけ見て、すぐにポーチを漁る。


お目当ての物を取り出して、なんて書いてあるかを見る。


【もんすたぁ】


相変わらず達筆で書いてあった。


モンスター?

モンスターをテイムできる?いや、それならテイムって書かれそうだし。


スキルを見ながら悩んでいると。


『ねぇ早くしてよ。さっさと使えば良いじゃない」


「急かすなよ。取り返しのつかない物だったら嫌だろ?」


『大丈夫よ。これ以上取り返しがつかないような事にならないわ』


どういう事だよ?俺が既に詰んでるみたいに言いやがって。


まぁでもデブだし?食ったら食った分だけ太るし?友達はいるけど、女の子からはキモがられるし?そんなんじゃ結婚出来ないし。


あ、詰んでるわ。一生1人だわ。

でも妹がいるからワンチャン1人ではないかもしれないけど、妹が結婚したら1人か。


あー。アイツ俺の妹なのに可愛いから絶対に結婚するな。未だに彼氏がいなかった事が奇跡だわ。


なんか考えたら死にたくなってきた。

もうどうでも良いし、開いちゃお。


徐にスキルの書を開く。

相変わらず、煙が出てきた。


『ちょっ!ゴホッ!ゴホッ!何すんのよ!?』


「あー。悪りぃ。これ開くと煙出るって言うの忘れてた」


『もう!害は無さそうだから良いけど!』


プリプリしてるシャルを横目で見ながら、スキルを発動しようとするが、どうすれば発動するかもわからないので無駄だった。


「マジでスキルの効果が分からん」


『えー?あんだけ待たせて何も無し?バッカみたい』


コイツ口悪すぎ。

どう育ったらこんな風になるんだよ。


くっころ系姫騎士スライムじゃなくて、

くっころ系姫騎士高飛車スライムだな。


「はぁ。もう良いや。とりあえずレベル上げ行くか」


『それじゃ2層からね!』


まぁそうなるわな。

1層で同族殺してレベルアップは流石に無いだろう。


2層へと進む。途中出てきたスライムはシャルが会話をして退いてもらう事に成功した。


2層へと辿り着く。


「んじゃ。ゴブリンやるかー」


『アイツらボッコボコにするわ!』


「なんかめっちゃ張り切ってんじゃん」


『そりゃそうよ!今までは1人で倒す事ができなかったけど、今回はアンタがいるからね!余裕よ!』


俺1人でもギリギリなんだけどなー。

コイツが増えたところで余裕が果たして出るかどうかは分からんけどな。


「とりあえずゴブリン探すかー」


そう言って歩き出すとすぐに目の前の曲がり角からゴブリンが出てきた。


ゴブリンはニチャァとした笑いを浮かべて持っている棍棒を振り上げながらこちらへ走ってきた。


「うぉ!」


咄嗟に横に避けるとそのままゴブリンは通り過ぎて行き、止まろうと前のめりになる。


『今よ!』


俺の肩にいたシャルがゴブリンの背中めがけて体当たりをした。


背中に体当たりを受けた事で、勢いのままうつ伏せに転ぶゴブリンに飛び乗る。


グエッという呻き声をあげて、頑張って立ち上がろうとするが、奴には俺の体重を持ち上げる事ができない。


そのままゴブリンの棍棒を奪って頭を滅多撃ちにする。


シャルも負けじと顔に体当たりをかましており、しばらくするとゴブリンは動かなくなった。


ゴブリンが煙となり消えていき、後には魔石だけが残っていた。


レベルが上がりました。


無機質な声が聞こえる。


「は!?え?何?」


『どうしたのよ?』


「今レベルが上がりましたって・・」


『え?たしかに私のレベルは上がったけど、アンタにも聞こえたの?』


「あぁ・・・。じゃあ今のはシャルの方の声が俺にも聞こえたって事か」


『え?私のは聞こえないはずよ?』


「じゃあなんで・・・?なぁ、モンスターってステータスを出す時どうやって出すんだ?」


『心の中で念じるのよ。ステータス見せてって』


それを聞いた瞬間、心で念じてみる。


すると目の前に半透明のボードが現れた。


「なぁ?これ見えてる?」


『何が?』


「ステータス画面」


『自分の以外は見えないのよ。え!?まさか?』


「あぁ。俺のステータス画面出てるわ」


俄には信じ難いが目の前には実際にステータス画面が出ている。


その画面をよく見てみると


【名前】 神崎神曲

【年齢】 24歳

【種族】 ピザデブ

【レベル】2/15

【力】  50

【防御】 60

【速さ】 15

【頭】  悪い

【スキル】

・ぴっつぁ

・すらいむのきもち

・もんすたぁ


種族!種族ううううう!!


ピザデブとか悪口でしか無いから!!

頭ってのもさ何でそこだけ数値じゃないの!?悪いの一言は傷つくよ!


マジ舐めてるわ〜。

何?この世界は俺が嫌いなの?


俺が画面を見ながら転がっているのを見てシャルがドン引きしている。


『キモ・・・。豚が背中痒くて転がってるみたい・・』


「おまえさー。その言い方はひどいぞ?」


転がるのをやめて立ち上がる事にする。


「帰るか」


『えぇ?急にどうしたの?』


「だっていきなりモンスターになってしまったんだぞ!しかも種族がピザデブとかさ!もう傷付いたからおうち帰る!」


『デブがおうち帰るとか言ったら余計にキモイわよ?』


「うるさい。俺はもう帰る」


『あーもう!わかったわよ!今日のところは帰りましょう!但し!明日からまた頑張るわよ!?』


「気が向いたらな」


そう言ってシャルを置いてフラフラと歩く。


『ちょっと!待ちなさい!』


フラフラ歩く俺の速度ではスライムにすら追い付かれるらしい。


俺に追いついたシャルは一回の跳躍で肩に乗ってきた。


『ふふふ。どう!?私もレベル上がったからジャンプ力も速さも上がったわ!』


「おめー」


『何よその気のない返事は!褒めなさいよ!』


「すごーい。シャルは天才だー」


『わかればいいのよ!』


適当に流してる俺の言葉を真に受けたシャルを乗せたまま、ダンジョンの出口を目指した。

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