従魔登録

出口に向かう途中、もうひとつのスキルが気になったが、コイツを従魔登録せずに放置したら殺されそうだし先に登録を済ます事にする。


ダンジョンを出てすぐに探索者協会があるので、そちらへと向かった。


今更だが、ここは宮崎市にある宮崎ダンジョンだ。んで、今から向かうのが探索者協会宮崎支部になる。


向かう途中、今の季節は春だから少し風が冷たかった。

まぁ俺はデブだから寒いくらいでちょうど良いんだけど。


「おい。嫌かもしれんが、俺の肩に乗ってくれ」


『え!?何であんたのくっさい肩に乗らなきゃいけないのよ!?』


肩が臭いって・・。それもう俺の体どこでも臭そうやん。コイツマジでナチュラルに俺を傷つけるな。


「乗らないとモンスターとして認識されて、即殺されるぞ?それとも俺の両手に抱えられるか?」


それを聞いたシャルがブルブルと震えている。


やっぱ殺されるって聞いて、怖くなったか?


『アンタの手に包まれるなんて、想像しただけで吐きそうだわ!だから肩にするわ!』


クソが。俺の手が嫌すぎて震えてたのかよ!?マジで怠いわ。


「じゃあさっさと乗れ」


少しイラつきながらシャルに言うと、大人しく俺の体を這って肩までくる。


てか俺の体を這いつくばる方が嫌じゃ無いのか?スライムは良くわからん。


肩にシャルを乗せたまま、自動ドアを潜り、中へと入る。


そのままカウンターへ赴き受付嬢に話しかける。


「すみません。買取と従魔登録をお願いしたいのですが」


「はい。それでは買取の物をトレイに乗せてください。それと従魔はそのスライム1匹でいいですね?」


「はい」


3層に行くまでに遭遇して倒していたゴブリン達から出た魔石10個を取り出してトレイに置く。


「魔石10個ですね。それでは従魔登録用にこちらの書類を書いてください」


そう言って書類を渡すと、受付嬢は魔石を持って行った。


渡された書類に俺の名前や年齢など必要事項を書いて、モンスターの種族や名前を書く。


書きおわりしばらくすると、受付嬢が戻ってきた。


「買取金額は五千円ですね。これでよろしければサインをお願いします」


そう言って渡してきた書類にサインする。


「はい。お金は探索者カードに入れときますか?」


「それでお願いします」


探索者カードを受付嬢に渡す。

探索者カードは口座が付いていて、それに直接お金を入れて貰えば、全国どこのATMでも下ろすことができる。


「はい。それでは従魔登録の方ですね。・・・・。はい。大丈夫です。それでは従魔用アクセサリーはどれがいいですか?」


見せられたのは、リボン、腕輪、ドッグタグだった。


いや、こんなんスライムやからリボン一択やろ。腕輪とかどこにつけるんだよ?


「リボンで」


「はい。他に何か御用はありますか?」


「無いです。ありがとうございました」


そう言ってカウンターを後にした。


協会を出ると、シャルが話しかけてきた。


『ねぇ。これで登録も終わったんでしょ?』


「あぁ。今日は家に帰ろうかと思ってるんだけど」


『そうなの?もう少しダンジョンに潜らないの?レベル上げましょうよ』


「は?レベルなんてゲームの中だけだろ?」


『え?人間にはレベルが無いの?』


「ゲーム以外で聞いた事ないぞ」


もしかして俺が知らないだけでレベルとかあるの?ちょっと調べてみよう。


スマホを取り出して検索してみるが、ゲームなど創作物関係以外では出てこなかった。


「おい。やっぱり無さそうだぞ?」


『あれー?私達にはあるんだけど・・。ステータス画面は無いの?』


「それも現実では聞いた事ないな。お前らはそんなシステムがあるのか?」


『あるわよ。だから一定のレベルまで上げれば進化したりするもん』


何てこった。じゃあ従魔にはレベルがある?


今一度スマホを出して調べる。やはりそんな事は出てこない。


「従魔にも無いみたいだぞ?」


『どうしてだろう?もしかして、私の場合はテイムされたわけじゃ無いから?テイムされて従魔になったら人間と同じシステムになって、レベルの概念が無くなるとか?』


その説はあり得るな。そうじゃなきゃ、今の所コイツのみレベルの概念がまだある事に説明がつかない。


『あ、でも人間と違って、モンスターにはスキルは無いわよ?』


「ん?でもスキルっぽいのを使ったりするモンスターもいるんだろ?」


『あれは厳密にはスキルではないわね。種族ごとに使える特技というか、そんな感じ。だから私達は進化すると新しくその種族用の特技を覚えるの』


もはやスキルといって良さそうなんだが。


「んー。まぁ細かい事を気にしても仕方ないだろ。お前にはそう言う概念があるって事でいいや」


『雑に生きてるわねー』


「うるせー。人生なんて考えすぎると死にたいって思うから。テゲテゲで良いんだよ」


『テゲテゲ?』


「まぁテキトーとか緩くみたいなもんだ」


ちゃんと説明するのも面倒だからそれで済ます。


「それじゃ。俺ももう一つスキルの書があるからそれを確認したいし、行ってみるか。あとリボンつけとくぞ」


『そうこなくっちゃ!それじゃ行くわよ!』


俺の肩でピョンピョン跳ねながら張り切るシャルを見ると、スライムでも誰かと一緒にダンジョンに潜れる事が嬉しくなった。

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