闇あかり

受付を終えたあかりとマリさんが帰ってきたので、そのまま講義をする場所へと向かった。


「この第2会議室でするから、中で適当に座って待っててね。講習用の資料を持ってくるから」


そう言って出て行くマリさんを見送っていると。


「お兄ちゃん?ちょっと見過ぎなんじゃ無いかなぁ?」


「うぇ!?な、何も見てないよ?お、お兄ちゃんはマリさんのお尻とか断じてみてないから!」


いきなりあかりから指摘されたことで思わず不穏な事を口走ってしまう。


それを聞いたあかりは少し怒った顔をしていた。


「あのねお兄ちゃん。お兄ちゃんにはボクがいるでしょ?お尻が見たければいつでもボクのお尻を見て良いし、見るだけじゃ足りないなら触って揉んで突っ込んでも良いんだよ?」


「いやぁ・・うん。はい。ごめんなさい」


いつもならここで兄妹だからってツッコミを入れたくなるが、流石にこんな場所で闇あかりを召喚したくはない。


なので頷くだけにとどめておく。


「わかったなら良いよ!お兄ちゃんはお利口さんだねぇ」


そう言って俺の頭を撫でてくるあかり。それにデレデレしてしまうのは仕方ない事であろう。


そんな事をしているとマリさんが資料を持って部屋へと帰って来た。


「お待たせ〜。それじゃあ始めようか」



それから暫くの間講習を受け、お昼になったので昼ごはんを食べて、ダンジョンへと向かう事になった。


向かうダンジョンはすぐ近くの宮崎ダンジョンだ。俺のホームだな。


ダンジョンに着くとマリさんがあかりに声をかける。


「あかりちゃんは入るの初めてだよね?さっき講習で言ったけど、入ったらスキルの獲得があると思うから、自己申告をしてね」


「絶対申告をしなきゃいけないんですか?」


あかりが嫌そうな雰囲気でマリさんを見ている。


「そうね。しなくても結局講習が終わって最初の登録をするときに鑑定の水晶でわかるから、隠すことはできないわよ」


あー。俺の時もあったなぁ。スキルが発現しなくて、もしかしたら自分で気付けないだけかもと最後の望みをかけて鑑定したけど、見事に何もなかった時はリアルにorzしたな。


その時に一緒に講習を受けた奴らに哀れみの目を向けられたのは辛かった。


「そうですか。それなら後で鑑定してもらう時に言います」


何故か頑なにマリさんに教えるのを嫌がってるようだな。


「・・本当は危ないスキルとかが出て、事件にならないように出来るだけその場で申告なんだけど、あかりちゃんはダンテ君の妹だし、大丈夫でしょう」


お?案外俺への信頼度が高いのか?

マリさんが折れたな。


そんな呑気な事を考えていると、あかりの方からブツブツと小さな声が聞こえた。


「さっきからボクのお兄ちゃんに馴れ馴れしいんだよ雌犬が・・。何がダンテ君♡だ。テメーの脳みそかち割ってミキサーにかけてあの生意気なスライムに喰わすぞ」


ひぃ!!

呪詛のように呟く声が聞こえてしまった俺は、恐怖に身をすくめてしまう。


やばいやばいやばい!!

どうにかあかりの機嫌を取らないとマリさんが危ない上に、ついでにシャルがグロ食事をする羽目になってしまう!


「あー!最初から信用してもらえるなんてやっぱりあかりはいい子だな!流石俺の世界一可愛い妹!お兄ちゃんはあかりが信頼されてるみたいで嬉しいよ!!」


そんな事を大きな声で言うと、両極端な反応があった。


マリさんは、いきなり何言ってんだこのシスコンわ!?キモっ!って感じにドン引きの表情をしている。


一方あかりは頬を赤く染めて、デヘヘ。お兄ちゃんったら!もう大好き!みたいな感じになってる。


まぁ心の声は聞こえないから実際はなんて言ってるかわからんけど。


「もう!お兄ちゃんったら!!ボクのことが好きすぎて心の声が漏れちゃってるよ!!大好き!!チューしちゃいたい!!」


おう・・。思ってたのより若干上の反応でした。


チューしたいとか、そんなことチェリーオブザイヤー受賞している俺に言ったら本気にしちゃうぞ!?


「あはは・・。仲がよろしいようで。とにかく!気を取り直してダンジョンに入るよ!!」


マリさんが手を叩いて、ダンジョンの方へと歩き始めた。俺は素直にマリさんに従ってダンジョンに入ろうと動き始めるが、横にいたあかりがマリさんに向かって再び呪詛を振り撒いているのを見て、足が止まってしまう。


「クソ虫が!!仲が良いのなんて当たり前だろ!ボクとお兄ちゃんだぞ!仲が良いどころか前世でも今世でも来世でもずっと一緒にいるって誓い合ったんだから。あんまりウザいこと言うと挽肉にするぞ!?」


その言葉を聞か無かったことにしてプルプルと子鹿のように震える足をどうにかダンジョンへと向けた。


因みにいつ誓い合ったのかは俺にもわからない。

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