オーバーキル

マリさんにコンコンと俺の良さを語るあかり。


そろそろ探索に行くか、研修を終わるかして欲しいんだけど。


そんな事を考えながらボーッとしていると、前方の方からシャルがやって来た。


『あ、ちょうど良かったわ。あんまり遅いから迎えに行こうとおもってたのよ』


「おー悪いな」


手を挙げながらシャルの方へと向かう。

それに気づいた2人が話をやめてこちらへと来た。


「ダンテ君「マリさん、神崎君だよ?」か、神崎君。君はスライムの言ってる事がわかるの?」


俺に声をかけたが、すぐさまあかりに訂正を食らったマリさんが聞いてくる。


「えぇ。そうなんですよ」


「でも君はスキルが無かったわよね?」


そういえば言ってなかったな。


「あー。昨日変な爺さんにスキルの書を貰ったんですよ。それがすらいむのきもちってスキルで、それが原因というかお陰というか言ってる事がわかるようになったんですよねぇ」


「そうなの?貴重なスキルの書を渡すお爺さん・・。妙ね・・」


なんでそんな名探偵的な感じになってるのかはさておき、流石にあの爺は怪しさ満点だったからな。言いたいこともわかる。


「とにかくあんまり怪しい話に乗ったらダメよ?もしかしたらそれが麻痺してしまう罠で、殺されたりする可能性だってあるんだから」


「そうですね・・。気をつけます」


そう言って素直にマリさんへと頭を下げた。


「ところで研修はまだ終わらないんですか?」


おそらく俺と2人がいいのであろうあかりがマリさんに催促をする。


「後は実際にモンスターを一匹狩って欲しいんだけど・・。二層に行ってゴブリンと戦ってもらいましょうか」


それはいいけどあかりの武器はどうするんだろ?前の講習では先に武器を選んでダンジョンに来たんだけどな。


「それじゃ、あかりちゃんはどんな武器がいいかな?」


急にあかりへと問いかけるマリさん。どういうことだろ?


「ナイフで良いです。使い慣れてるんで」


「わかったわ」


そう言うと、いきなりマリさんの手の中にナイフが現れる。


まさかこれって空間収納か?


「はい。これ使ってね。神崎君が疑問に思ってるかもしれないけど、これは私のスキルで、空間収納よ」


そう言ってあかりにナイフを渡している。


というか空間収納とか凄いんだけど、それよりもあかりのナイフを使い慣れてる発言が気になって仕方ない。


一体何に対して今まで使って来たのだろうか?・・・。いや、気にしない方が俺の精神衛生上良い気がする。忘れよ。


「では二層へ行きましょうか」


マリさんの号令で俺たちは進み始めた。


二層へつくとすぐにあかりが駆け出す。


「おい!あかり!?」


何事かと思い俺たちは後を追う。シャルが『んなー!いきなりなんなのよ!?』と言っているが、あかりを追う事が先決だ。


デブなのでどんどんと離されていき、後少しで見えなくなるかもと思ったところで、あかりが急ブレーキをかけて止まる。


ゼェゼェと肩で息をしながら立ち止まる俺の横に、少しも息をみだしていないマリさんが並んだ。因みにシャルはまだ後方でぴょんぴょんと跳ねながら追いかけて来ている。


あかりの方を向くと、その目の前にゴブリンがいた。すると、あかりが唐突に声を上げる。


兄妹愛無双おにいちゃん大好き!


スキルの発動の声なのはわかるが、何か少し恥ずかしくなる。


しかしその声と同時にあかりの身に起こった事が、恥ずかしさを吹き飛ばした。


スキルを発動したあかりの周りに、スーパーヤサイ人も吃驚のオーラとスパークが出現した。


「これは・・」


支部長として色々な経験をしたであろうマリさんもこれには驚いているようだ。


次の瞬間、あかりが動いたと思ったら、ゴブリンの後方へと移動していた。

その速度にも驚きだが、一瞬でゴブリンがまさしく挽肉へと錬金されていた。


それを見て俺の方へと満面の笑みで近づいてくるあかり。



「どう!?ボク強いでしょ?」


「あぁ・・。強すぎるな・・」


あまり俺の反応が芳しく無かったのか、あかりが不満げに唇を尖らせる。


「えー!もっと褒めて欲しいな?」


「!そうだな!流石あかり!ダンジョン入った瞬間にお兄ちゃんを超えるとか凄すぎるぞ!まぁ一瞬で越えられたお兄ちゃんはちょっと凹んじゃうけど・・」


「えへへ。大丈夫だよお兄ちゃん!これでボクとお金いっぱい稼いで2人のお城を作ろう?お兄ちゃんが弱くても関係ないよ!!だってボクは何があってもお兄ちゃんの味方だもん!」


ありがたい・・。でも兄の威厳がなくなるのは・・。


『はぁ〜。アンタの妹凄すぎね。というかアンタ兄の威厳がとか考えてそうだけど、最初から無いわよ』


ピンポイントで人の気持ちを読んだ挙句、悲しくなる事言うな!!俺も分かってるんだよ!


シャルを睨みつつ、頭を差し出して来たあかりを撫でる。


「これは・・。この子なら宮崎支部を有名にしてお金をガッポリ稼げるわね・・」


若干1名欲望に目が眩んだ人がいたことに気付いたが、気にせずにダンジョンを出る事にした。


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