もしかしてヤンデレ?
あかりとの食事を終え、お茶を飲んでいると。
「それで、お兄ちゃんは他に何を隠してるの?」
「ゴフッ!」
いきなりの質問にお茶を噴き出してしまう。
もう気にしていないものだと思っていたが、しっかりと覚えていたらしい。
「もう。お茶溢してるよ」
あかりが俺の口元や濡れたテーブルを拭いてくれる。
「あぁ、ありがと。・・・隠し事と言うか、スキルの事なんだけど」
「いきなりスキルが出たんじゃないんでしょ?」
オウイエッ。この妹はどれだけ鋭いのか。
隠し事出来なさすぎて、怖いわ。
「あー。実は今日3層に行ったんだけど・・」
「えぇ!?あれほどお兄ちゃんには無理だから、危ない事は辞めてって言ったでしょ!?」
眉を寄せながら、少し怒った口調であかりが俺を嗜める。
「それは・・ごめん。それで、えっと話の続きなんだけど」
「むー。・・何?」
口を尖らせながら俺の言葉を待っているあかりを見ると、ちょっと可愛いなって場違いなことを考えてしまう。
「それでよく分からん爺さんに助けられてさ。その爺さんがスキルの書をあげるって言うから貰ったんだよな」
「ホントにそのお爺さんは信用できるの?いきなり高価なスキルの書をあげるだなんて言う人いないよ」
「まぁ、それはそうだけど。俺もスキルが無いのはいい加減嫌だったからさ。ちょっと考えて、くれるなら貰おうと爺さんの方を向いたら、既にいなくてな。スキルの書だけ置いてあったんだ」
「それで?それを使ったの?」
「まぁ・・・」
「それがテイムスキル?」
「いや、テイムスキルというか、“すらいむのきもち”ってスキルだったんだよ」
「じゃあそれでスライムを懐柔して仲間にしたって事?」
「そんな感じ」
「そっか・・。それで他には?まだあるでしょ?」
「あ、はい。スキルの書が3つあって、もうひとつは“ぴっつぁ”ってスキルだった」
「ピザ?何そのスキル?」
流石のあかりもこのスキルは想像ができないらしく、顎に人差し指を当てて首を傾げている。可愛いです。
「俺の体内にあるカロリーを消費して、好きなピザを出せるみたいなんだ」
「それ使うの禁止だから」
「え?」
いきなりあかりの声色が冷たくなった。
あれ?怒ってる?ヤバくね?
「それ使ったら絶対に自分でピザを食べないとダメだからね?わかった?」
「え?あ、でもさ。これ使えばダイ・・」
ダイエット出来るという言葉を最後まで発する事が出来なかった。
なぜなら目の前のあかりは表情を消していて、その周囲からドス黒いオーラが出ているように見えたからだ。
怖すぎなんですけど?
「お兄ちゃんはそのままの方が良いんだよ?ボクが言ってる事わかるかなぁ?」
「いや!はい!何となくわかります!でも痩せたらデブってバカにされないと思うんだけど・・」
「やっぱりわかってないみたいだね?お兄ちゃんは太っているからお兄ちゃんなんだよ?
痩せちゃったらモテるとか思ってるみたいだけど、お兄ちゃんが痩せる時は火葬されて骨になる時だよ?わかる?だからどうしてもダイエットして痩せるっていうなら、そんなの使わなくても、ボクがお兄ちゃんを火葬してあげるよ。勿論その時はボクも一緒だから寂しくないよ?お兄ちゃんは永遠にボクのものなんだから!痩せて他の子に取られちゃうくらいならボクが終わらせてあげるから!!わかる?分かってるよね?分からないならお仕置きしないと!お兄ちゃんはそのままじゃないとダメなんだから!ボクだけのお兄ちゃんじゃないとダメなんだから!!」
ヤバい・・。
めっちゃ怒っとる・・。
これ俺死んだだろ。
いや、まだだ!まだ希望はある!と思う。
「あかり!」
俺はハイライトの消えた目で1人ブツブツ言っているあかりの肩に手を置いて、真っ直ぐに見つめる。
「俺が間違っていたよ!あかりが嫌なことをしようだなんて・・・。お兄ちゃん失格だ。俺にはあかりしかいない!こんな俺の傍に居てくれるのはあかりだけだ!だから、もうこのスキルはあかりの前以外では使わない!約束する!」
「・・・ホント?」
「あぁ。でもこれは料理が出来ない俺が唯一あかりに振る舞える料理スキルみたいなもんだ。だからあかりの為に使うことだけは許して欲しい。一緒にピザ食べよう!」
正直自分でも言ってる事意味わからんけど、こういう時に大事なのは勢いだ!
勢いでどうにかするしかない!
「・・・お兄ちゃん。わかった。それじゃ今度からピザを出す時はボクのお料理も一緒に食べる時だけだよ?ボクもお兄ちゃんから出るピザを食べたいから・・」
そう言いながらあかりの表情が少しづつ戻っていった。
どうにかなった!
でも俺から出たものを食べたいっていうところが、そこはかとなく狂気を感じる気がするけど、気にしたら負けだ。
「良かった・・。それともう一つのスキルだけど」
「うん。何だったの?」
「“もんすたぁ”ってスキルでな・・・。どうやら俺は人間じゃなくなったらしい・・」
「え?どういう事?」
「どうもスキルのせいでモンスターと同じ感じになって、レベルとか種族とかが出ちゃって、種族的にも人間じゃなくなってな・・」
「・・・それでもお兄ちゃんはお兄ちゃんなんでしょ?」
「まぁそうだけど。人間ではないらしい・・」
俺がそう言うとあかりは何も気にしてないようにこちらを見る。
「問題ないんじゃない?結局見た目は今まで通りだし、なによりも兄妹だけど厳密には兄妹じゃなくなったという事は・・・」
「事は?」
「・・・ううん。何でもないよ!これでお兄ちゃんとボクに立ち塞がっていた壁も無くなったって事だから・・」
何でもないと言った後、何か言っていたが寒気でそれどころじゃなくなった。
不穏な事を考えていそうだが、あかりが俺を邪険にするはずも無いし大丈夫だろ。
「それじゃお風呂入ろっか!」
「あー。それも兄妹だし、俺たちも成人してるし?どうなのかなぁって・・」
「は?」
「いえ!兄妹で大人になってもお風呂入ると流石に体裁が悪いかな〜って」
「何言ってるの?別に誰かが見てるわけでも無いよね?ボクとお兄ちゃん2人だけしかその事知らないよね?別に知られても良いけど。だから問題ないよね?そもそも今までずっと一緒に入ってきたのにいきなりどう言う事?やっぱり今日おかしな事があったのかな?あのスライムかな?もしかしてあのスライムはメスなのかな?そうだったらやっぱりピーラーだよね?全部薄切りにしちゃうのが良いよね?明日の晩御飯にスライムの焼きシャブを出すね。そしたらお兄ちゃんも変な事言わなくなるもんね?そうと決まれば早速アイツを剥かないと」
ゆらりとあかりが立ち上がるのを必死で止める。
「待って!待ってくれあかり!」
「どいてお兄ちゃん。アイツ殺せない」
「ごごごめん!一緒に入る!いやぁあかりは可愛いから、俺も人間じゃなくなったし、もしかしたら襲っちゃうかもしれないけど一緒に入ろう!うん!それが良い!あかりのエロい体にお兄ちゃん反応しちゃうけどごめんね?だからすぐにお風呂場に行こう!」
焦る俺を見ているあかりの目に光が戻る。
「ヤダもう!お兄ちゃんったら!大丈夫だよ?ボクはいつでもOKだからね!それじゃお風呂沸かしてくるね〜」
スキップをしながら風呂場に行くあかりを見て、どうにかなったと安堵の息を漏らす。
『アンタ・・。兄妹でそんな事するとか、イカれてんの?』
ちょうどあかりがいなくなったタイミングでシャルがこちらへ来た。
「お前、そんなこと言うなよ。こうでも言わないと死んでたぞ?」
『それは感謝するけど、マジでするわけ?』
「いや、流石にする気はないぞ?」
『・・・襲われない事を祈るわ』
不吉な事を言うな!
でも正直あかりとなら良いかな?って思いもあるんだけどね。
あかりが呼びに来るまで、妄想しながらニヤけている俺に対して、シャルが痛い物を見る様な視線を送っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。