足りない欠片を埋め合うような二人の謎解きが心地良いミステリ

バイリンガルとひと口に言っても、決して両方の言葉が完璧なわけではない。聞いて分かるだけだったり、二か国語とも未熟なままだったり。一般的なイメージとは違うバイリンガルのリアルを取り上げた作品は珍しいのではないでしょうか。

かたや観察力と洞察力の深さ、かたや常識を超えたひらめき。中国人と日本人。デコボコな二人のコンビが自分の持てる中国語の力を駆使し、日常に潜む謎を解決していきます。それはお互いの足りないピースを埋め合いながら作り上げるパズルのようです。

ところどころに挟まれる中国語のセリフや詩に筆者の豊かな知識が滲み出ています。そして歴史や文化に基づいたエピソードも印象的です。

ふたつの言葉の間に生きることとは。
その居心地の悪さから、もうひとつ先の世界へ足を踏み出すこととは。
物語を通じて主人公の心境がどう動いていくのかも読みどころです。
タイトルでもある中国茶のような心地の良い後味が残ります。

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