何かが欠けている。ちょっとずつずれている。だから「見える」ものがある。

最初から、完璧に言葉を使えたらどれだけいいだろう。いくつもの言語を、ペラペラに喋れるような人間になりたい。
多分、「バイリインガル」に憧れを持った人は、少なくないと思います。

何の苦労もしないで、「恵まれた」環境によって育てられた言語能力……ん? 本当にそうか?


小学校2年まで中国で育ち、日本で暮らし続けた、「中国語は読めないし話せないけど、話す内容はわかる」浩然くん。
一族で日本で育った雪梅さん。
中国語初心者の岡くんと杉浦さん。
そして、「日本語も中国語も喋れるけど、限界がある」希くん。

様々な視点から見える、事件の真相。
和崎先生の「龍井」の淹れ方、「手話を覚えたアイドル」と「15人全員が遅刻した理由」、「図書館の本の行方」、「偽名の往復書簡」……。


「自分の国」とはなんなのか。「言葉を話せる、理解する」とはどういうことなのか。
実は同じ言語や言葉を使っていても、その意味は皆ちょっとずつずれているのかもしれない。

具体的なものではなく、必ずあてはまるものでもない、名前や言葉の外側にあるものを、彼らはどう共有し、事件を解決していくのか。是非読んでください。

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