8月2日

 この夏何日目かもうわからない猛暑日だ。

 暑い。あまりにも暑くて家に飾っていたひまわりの花びらを一枚むしって食べた。ひんやりとした甘さが口に広がって美味しい。思わずもう一枚。ひまわりが悲鳴をあげるのも気にしない。気にしていたら私が暑さで死んでしまうから。数枚食べ終わる頃にはひまわりの声は啜り泣きに変わっていた。抵抗もできない切り花に逃れる術などない。

 半分ほど食べたところですっかり暑さは和らいで、目の前には不恰好なひまわりだけが残った。禿げ散らかしたそれは醜くて汚らしい。項垂れて泣く気力すらなくなったそれは黙りこくっていて、もしかしたらもう死んでしまったのかもしれないと思った。

 この醜いまま、花瓶に生けておくのはかわいそう。私は残りの花びらをいっぺんに引き抜くと、氷砂糖と一緒に瓶に詰めた。仕上げに夏の日差しを三滴。

 明日になればきっとお日様色の綺麗なシロップができあがる。楽しみだね、と声をかけてもひまわりは何も言わなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る