ゆめかうつつかわからない
久慈川栞
8月1日
水色の絵の具を水に溶いて、空にぶちまけたような晴天の日だった。すっかり夏らしい空を見上げて、私は隣に座るレオに「どうしてお話や絵画のなかで空を泳いでいるのは鯨が多いんだろうね」と問いかける。
「そりゃあ大きい方が迫力あるからじゃないか」
レオはなんてことないという風に釣り糸を放り投げながら答えた。
「自分には手の出しようがない、と思えるくらい大きい方がいいのさ。そうでもしないと絵に説得力がない」
「説得力」
「ヒトはいつでも神を求めてるんだろ?」
そういう訳じゃない気もするけど。まあいいや。私は持っていた竿をくいと引く。確かな手応えがある。適当にやめないと食べきれなくなりそうで、釣り上げた一匹を既にいっぱいのバケツに放り込むと私は竿を片付けた。今日の天魚予報は大当たりだ。それを見たレオも片付けを始めながら喉を鳴らして笑った。
「そもそも、小魚が沢山いたところで画にならないじゃないか」
確かにそうだけど、夕飯には困らないと思う。私は群れをなして空を泳ぐアジを見上げた。今夜はフライにしようと思う。
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