8月7日

 夜が始まる頃に家を出た。たまには夏らしいことをしようと思って、クワガタでも狙ってみようかと思ったのだ。レオにも声をかけてみたらいそいそとついてきたので、車に乗せて田舎に向かった。

 程よいところで車を停めて歩き回る。ただ思ったほど虫がいない。木の幹や自販機の灯り、街灯の下もくまなくチェックするのにクワガタどころか蛾もいなくて私は困惑した。もっとうじゃうじゃ街灯の下で踊り狂ってる虫たちに辟易するのが夏じゃないの?

「かなり偏ってるね」

 呆れたようにレオが笑う。そう言う彼も楽しみにしてたのだろう、やや落胆したように髭が寝ている。「夕立のせいかな」「その程度でいなくなるかな……あっ」レオが声を上げた。

「どうしたの」「ほら、あれ」山の中を指さす。しばらくそこを凝視して、ようやく仄かな灯が山の中で等間隔に並んでいるのを確認した。

「なんだろう」「祭りの日だ。昨日が立秋だったから、秋の虫を迎える祭りがあるから誰もいないんだ」

 なるほど今日は樹液を吸っている場合じゃないということなのか。参加できるだろうか、と考えたけれどどう見ても虫捕りスタイルの服と装備で、これは怒られるなと諦めた。

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