8月4日
静かな夜だった。こんな日は読書でもしながら音楽でも聴きたいな、とぼんやり考えているとチャイムが鳴って、インターホンに誰も映ってないものだから玄関扉を開けると足元にキリギリスが一匹立っていた。
「一曲いかがでしょう」折角なのでお願いする。キリギリスはギターをゆったりと弾きながら、羽を震わせて独特の音楽を奏でる。初めて聴くアップテンポなジャズは、思った以上に素敵な音色で驚いた。
「流しで歌をうたってるんです。楽しいことしかしたくないから、好きなことを仕事にしようと思って」今じゃアリの家に呼ばれることもあるんですよ、そう言って笑うキリギリスは渡したコインを椅子にして座り込んだ。私もハンモックに寝転がり、読みかけの本を開く。もう一曲アンコール。次は更にゆったりとしたバラードで、読書の邪魔をしない最高の選曲だった。
「これで稼いでおけば冬の間も安心でしょう」「確かにそうかも」最終的に四曲弾いて、私からのチップを抱えて満足そうに帰っていった。次来る時にまた声かけてと頼んだけれど、「どうでしょうか」と曖昧に笑っていた。
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