★★★ Excellent!!!
インターネットの楽しさと、たしかな希望を感じられる物語 伴美砂都
世の中がコロナ禍といわれるようになってから、いつのまにか、もう1年半ほども過ぎてしまいました。
医療者としてだれかの役に立てるわけでもない、なんの力を持っているわけでもなく日常を暮らすしかない私は、どのように日々を過ごしていったら良いのか……と、無力感のような気持ちに襲われる時もあります。
大人でさえそうなのですから、子どもたちや若い人たちは、もっとそうでしょう。
お友達とマスクを外して笑い合うこともできず、楽しいはずの行事も中止になり……もやもやした気持ちで過ごしている人も多いと思います。
主人公の沙友里も、その一人です。仲の良い姉も帰省できず、お友達と集まることもできない長い夏休みに、つまらない気持ちを抱えて過ごしています。
そんな沙友里が、はじめて一人で訪れたカフェで「文学少女」というアプリのチラシと出会うところから、物語は始まります。
文学作品の本文から作品名を当ててくれるという「文学少女」とメッセージをやり取りするうち、沙友里の心に、小さな変化が現れます。そして、ひとつのことを成し遂げると決めるのです。
それと同時に、「文学少女」のメッセージも、これまでと少し変わったものになります。
沙友里がどんなチャレンジをしたのか、そして「文学少女」アプリとのやり取りの顛末は、ぜひ作品を読んでいただきたいのですが、
閉塞的で、ともすれば人との繋がりが頼りないようになってしまうこ…
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