第9話メタルキャット・エクストリーム【ショートショート】

私はナナシ、皆さんは聞かなければ良かった事はありませんか?


世の中には知らない方が、幸せという事が存在するのです。


しかし、人間とは不思議なもので、知れば危険とわかっていながらも、知りたいという知的好奇心という感情があるのです。


私はオカルト好きの村上氏から、後から聞かなければ良かったという噂を聞いてしまったのです。


今日はその話を皆さんにお伝え致します。


後悔したくない方は、この先は読まない事をオススメします。


では、お話ししましょう。




村上氏から聞いた噂によると、現在この日本に猫型のロボットが存在するというのです。


それを聞いた私はAIBOのような犬型の可愛らしいAIロボットや、または米軍が開発している軍事用の四足歩行型のロボットを連想しました。


しかし、村上氏の話によると、猫型とは名ばかりの奇妙な容姿をしているのです。


その猫型ロボットは非常に短い手足をしているそうです。


短い足の猫ならば、マンチカンような可愛らしい猫がいます


しかし、その話で気になった点がありました、手足という表現です。


猫型ならば手という表現でなく、全て足と表現するはずです。


その点を村上氏に問いただすと、なんとその猫型ロボットは二足歩行するというのです。


一時的に二足歩行する猫はいますが、その猫型ロボットは常に二足歩行をするというのです。


更に詳しく聞いてみて、私は驚愕しました。


なんと、耳がないというのです。


耳の形状をした物がなく、耳の穴すらないというのです。


皆さんは耳のない猫を連想できますか?


猫のあの可愛らしい耳が存在しないのです。


世の中には耳のない猫はいるでしょう。


しかし、そのロボットは人為的に作っておきながら、耳が存在しないのです。


私はその真実を聞き、開発者の美的センスに愕然しました。


だが、村上氏によると、初期の段階では耳があったらしいのです。


私はとても安堵しました。


まだ開発者は、正常な美的センスを保っているようです。


しかしその後、村上氏は衝撃的な言葉を発したのです。


私は現実を理解できず、思考が停止寸前です。


なんとその猫型ロボットは、耳をネズミに食い千切られたというのです。


機械の耳を普通のネズミが食い千切られるとは思いません。


その問いに村上氏は、ネズミもロボットと発言して、私は少し納得してしていました。


しかし、なぜネズミ型ロボットが猫型ロボットの耳を食い千切るのでしょう・・・。


理由を村上氏に訪ねたのですが、その理由までは村上氏は知らなかったようでした。


その後、村上氏は奇妙な事を言い始めたのです。


猫型ロボットの色が変化したというのです。


耳を失った事ににより、黄色から青へと色を変化させたというのです。


私の頭は混乱しました。


開発者は一体なんのために、耳を失うと色を変化させるというシステムを、その猫型ロボットに導入させたのでしょう・・・。


私は理解に苦しみました。


その答えは私の頭脳では理解できないのです。


そのような高度な構造を、そんなレアケースの為だけに導入するメリットが思いつかないのです。


きっと開発者には耳を失うと黄色から青へと変化する事に、何らかの有効性を見出しているのでしょうが、今の私には理解できませんでした。


今度は村上氏から尻尾の形状を教えてもらいました。


またしても、理解に苦しむ形状をしているのです。


短い針金の先に赤いピンポン玉状の球体が付いているらしいのです。


ここまで、色々と不可思議な体の形状を聞いていた私は、流石にその程度の事では驚かず、スルーして次の話に耳を傾けました。


しかし、私は油断していました。


その開発者の美的センスは、私の理解を遥かに超えているのです。


その後に聞いた発言によると、なんとその猫型ロボットの頭部と胴体は、お団子が2個重なったような容姿をしているそうです。


私はまたしても、理解に苦しみました。


今までの話を統合すると、到底猫型ロボットという表現は正しくないのです。


お団子が2個重なった頭部と胴体、短い手足、耳もなく、丸く赤い尻尾、体の色は青く、更に二足歩行するのです。


これのどこが猫型なのでしょう・・・。


私には青い落花生の殻という表現がピッタリときました。


開発者は何を持ってこのロボットを猫型ロボットというのでしょうか?


私には開発者が現実逃避し、自身の感情に無理やり、その落花生型ロボットを猫型ロボットと思い込もうとしているようにしか思えません。


もしかしたら、上司やクライアントから猫型ロボットと依頼させ、完成したのがこの落花生型ロボットだったのかもしれません。


それを無理やり猫型ロボットと言い張り、依頼を無理やり通したとしか私には思えませんでした。


そんなありえない理由でしか、それを猫型ロボットという感覚を理解できないのです。


呆然とする私に村上氏は更に何か重大な事を話そうとするのです。


私はこれ以上聞くと、私自身が気が狂いそうになりそうで、両手で耳を塞ぎ涙をこぼしていました。


どれほどの時間が流れたのでしょう。


私の涙が止まる頃、私の心の奥から熱い何かが湧き上がるのです。


その感情は知的好奇心という魔物なのです。


私は自身のそのモンスターを抑える事ができず、ついにその続きを聞いてしまったのです。


村上氏から告げられたその話に、私は恐ろしさと怒りという、表現しがたい感情がうずまき、近くにあったアツアツのラーメンを村上氏に投げつけてしまったのです。


村上氏は悲鳴を上げ、丼は頭の上に乗せ、麺とスープでびしょ濡れの体をクネラせながら苦しんでいるのです。


それは当然の反応です。


村上氏から発せられた内容はあまりにも恐ろしく、禍々しい内容だったからです。


そのため、それを言った村上氏本人でさえ、悲鳴を上げ体をクネラせて苦しんでいるのです。


その内容とは、落花生型ロボットの顔は人面なのです。


しかも、目は大きく見開き、口は頭の側面まで裂け、鼻は真っ赤に染まり球体状をしているのです。


これのどこが猫型なのでしょう・・・。


猫の要素がどこにもありません。


私の頭脳はパニックで爆発寸前です。


その後、落ち着きを取り戻した私の目の前には、村上氏が怒りの絶頂という表情をしているのです。


そして、村上氏は私の前から去ろうとしていました。


村上氏は自身もこれ以上話すという事が、私達二人の命に危害が及ぶよ考えたのしょう。


私は村上氏の怒りの表情から、その真意をさっしたのです。


しかし、私の巨体化した知的好奇心というモンスターが、村上氏を離そうとしないのです。


足にしがみつき、子供が駄々をこねるかのように泣き叫び、村上氏が何か秘密にしている更なる真実を聞き出そうとしてしまうのです。


その時の村上氏の表情は今でも忘れられません。


何か汚い・・・そう、汚物を見るかのような眼差しで私を見つめるのです。


その眼差しから私は、村上氏の覚悟を感じ取りました、


そして村上氏は最後に信じられない事を発するのです。


その落花生型ロボットは未来から来たそうです。


私はその言葉を聞き、これから来る未来に絶望しました。


未来人の美的センスの無さに絶望し、そのまま気を失ってしまいました。


目覚めるとスマホに一通のコメントが届いていました。


それは村上氏からのコメントで絶交の文字が書かれていたのです。


きっとこの真実を知ってしまった私と心配し、何らかの危害を私から遠ざけるため、自ら身を引いたのでしょう。


私はそんな心優しい友人を失う代償に、恐ろしく真実を聞いてしまったのです。


皆さんも自身の知的好奇心というモンスターには注意してください。

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