第5話クロスシンボル・バニーガール【ショートショート】

私はナナシ、今回も私が体験した奇っ怪な出来事をお話しいたします。


その日は太陽が沈み、街頭がチカチカと照らす薄暗い路地を通っていました。


そして目線の先に、街頭の下で特殊な帽子を被った子供が立っていました。


しかも、その子供は微動だにせず、こちらを見続けているのです。


私は何故か不安を感じましたが、引き返さずそのまま歩み続けました。


その子供に徐々に近づき、子供の容姿を確認できる距離まで近づきました。


そのとき、こう思ったのです。


私はなぜ不安を感じたとき、自分の直感を信じ、引き返さなかったのだと・・・。


そこに立っていたのは、子供という可愛らしい存在ではなく。


バケモノだったのです。


顔は真っ白く、2本の白い角があり、小さな鼻の穴が離れて2つあるのです。


そして信じがたいことですが、目が存在しないのです。


更に最大の特徴としては、口がペンで書いたかのようなバッテン(X)の印の形状をしているのです。


この世のどこにバッテンの口を持つ生物がいるでしょうか?


そして頭脳に電流が走り、私は思ったのです。


そこに立っているのは、バッテンの口をした白い悪魔だと。


そう思うと、もう恐ろしくて震えが止まりません。


私は危険を感じ、早くこの場から立ち去らなければと思うのですが、足が全く動きません。


そんな私の目線はどうしても、その奇妙なバッテンの口へと行ってしまい、様々な恐ろしい想像をしてしまうのです。


この白い悪魔は、どうやって獲物を捕食するのだろうと。


人間ならば上下に口を開きます。


では、バッテンの口をした、この白い悪魔はどのように口を開くのかと。


私の想像では、上下左右の4方向に開くのです。


口の先端は三角状に鋭く尖っています。


もしかしたら、その尖った鋭い口の先端で、獲物を狩るのかもしれません。


または、SFホラー漫画に登場した、寄生生物に頭を奪われた怪物のように、口が更に開き獲物を丸呑みするかもしれません。


私は永遠とそんな恐ろしい想像をして、ガクガク震えているのです。


私の思考は、あまりの恐怖で理性を保っていられないほどになっていました。


突如、その時です。


その白い悪魔の口が動いたかのように見えたのです。


私の心臓は張り裂けんばかりの恐怖に襲われ、それは爆発したのかと思うほどでした。


そして、心の奥底から天の彼方へ届かんばかりの悲鳴のような言葉を発するのです。


「食われる!」


その後、私は気を失ってしまいました。


気が付くと、体臭がキツそうな酔っぱらった初老の男性に、看病されていました。


酔っ払いながらも、その初老の男性は必死に私を看病してくれたのです。


私はお礼を告げようと口を開いた瞬間、男性のあまりの体臭の臭さに、男性に目掛け、思いっきり嘔吐してしまったのです。


男性は烈火の如く激怒していしたが、嘔吐した私は、先程の嫌な出来事ごと吐き出したかのように、とてもスッキリしたのです。




それから3日間、私はバッテンの印を見ると、吐き気を催すようになってしまいました。

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