第12話マッドスマイル・ホワイトデビル【ショートショート】

私はナナシ、皆さんは守り神や守護神といった存在を信じているでしょうか?


今回のお話しは、私が遭遇した鉄壁の守りを持つ、ある存在について語らせていただきます。




私は無性に肉を食べたくなり、ある鶏肉専門店に向かいました。


その店舗の存在は知っていましたが、今回が初めての訪問になります。


店舗に近づこうとした時、私はある異変に気付きました。


なんと、店舗のドア付近に老人が微動だにせず、立っているのです。


私は自分の違和感を信じ、その老人を遠くから観察しました。


一時間ほど観察してわかった事は、その老人は全く動くことはないのです。


そんな人間はいるでしょうか・・・。


体は全く動かず、瞬きすらしないのです。


しかもその顔は、いやらしい笑みを浮かべ、常に一点を見つめ続けるのです。


その姿に私は、背筋に氷を当てられたような身震いする不気味さを感じました。


更にその容姿も異常さを感じました。


髪・口髭・顎髭は真っ白く、服も真っ白なスーツを着ているのです。


そして、いやらしい顔で一点を見続けているのです。


その時私は、ハッと気付いてしまったのです。


その老人は自身をマネキンのように擬態して、獲物を物色しているのではと。


その獲物とは、もちろん若い女性です。


その事に気付いてしまった私は、沸々と心の奥底から怒りが溢れ出すのです。


なんとしても、この変質者の老人から、若い女性を守らなければならないという使命感を感じたのです。


私はこれから起こる壮絶な戦いを想像すると、恐怖で足が震えましたが、決意を固めその老人の元へと、駆け寄ったのです。


老人の前に立ち、まずは一言注意をしよう口を開いた瞬間、老人の目を見てしまいました。


私は全身を氷で固められたように、全く動けず体の血液が凍りつくように、ガタガタと震えてしまいました。


顔は笑みを浮かべていますが、目の奥にある禍々しいまでの悪意を私は感じ取ってしまったのです。


そこに立っているので、ただの変質者の老人ではなかったのです。


老人の皮を被った白い悪魔、まさにホワイトデビルがそこには居たのです。


私は自分の未熟さを恨みました。


私の力では、このホワイトデビルには到底かないません。


それほど、このモンスターは恐ろしくまでの、圧迫感で私を覆い尽くそうとしているのです。


しかし、数々の試練を潜り抜いた私は、更に決意を固め一歩前へと歩み寄ったのです。


そして、一矢報いる思いで、近くにあった店舗のメニュー表の看板を高々と持ち上げました。


そして、持ち上げた看板を力任せに、ホワイトデビルに叩き込んだのです。


予想外にも、ホワイトデビルは何の抵抗もせず、看板をモロにくらっいました。


そして、勢いよくホワイトデビルは倒れたのです。


私は心の中で、また一つ世界を救ったという、喜びで心が幸福で満たされました。


しかし、その幸福は長くは持ちません。


なんと、店舗の中なら定員が2名、私に駆け寄って来たのです。


私は直感しました。


この店員もホワイトデビルの仲間なんだと、店員の姿はしているが中身はモンスターだと思いました。


私は瞬時に以前動画で見た、カマキリを模した拳法、螳螂拳の構えをしましたが、あっさりと店員に取り押さえられてしまったのです。


取り押さえて身動きが取れなくなった私は、倒れたホワイトデビルを見ました。


すると、そのニヤけた表情で「あきらめたらそこで試合終了だよ」と嫌味な皮肉を言っているように感じ、私は激しく悔しい思いをしました。


取り押さえられた私は、そのまま店舗の事務所へと連れていかれたのです。




それから3日間、私は肉を見ると怖くなり、3日間だけベジタリアンになりました。

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