第8話アトミック・メタルボーイ【ショートショート】

私はナナシ、皆さんは裸の王様という童話をご存知だろうか?


今回はそのような姿の人物に遭遇した奇妙な話になります。




その日はとても寒く、私はコートを3枚も重ねて外出していました。


そして、路地の曲がり角で私は遭遇しまったのです!


裸の人物に!


その人物は子供くらいの身長をしており、独特な尖った二本の髪型をしていました。


何より驚愕すべき事は、こんな極寒な日に黒いブリーフ状のパンツと赤いブーツしか着てない事です。


その時私はこう考えました。


この人物は変質者なのではと?


きっと、路地の曲がり角で永遠と獲物が来るのを待ち伏せしていたのです。


獲物とはもちろん、若い女性です。


しかし、変質者が獲物とする若い女性ではなく、私は頭脳明晰な好青年です。


その時、私の内に眠る正義感がメラメラと目覚める感じがしました。


この場で、この変質者を退治しなければ、次から次へと若い女性が被害にあってしまいます。


そして、立ち向かおうとした時に、私の脳裏に電流が流れ、危険に対しての警告を感じたのです。


それはこの変質者の態度です。


普通の人間なら、このような薄着では体を震わせ、凍えてしまうかもしれませんが、この変質者は平然としているのです。


私はこう直感しました。


この変質者は何らかの達人なのではと。


この極寒の中、パンツとブーツだけで、平然としているのです。


その顔は何も感じていないような、涼しい顔をしています。


この変質者は、自分の性癖を堪能する為に、恐ろしいまでの特訓をしたのだと感じました。


性癖に対する何という情熱なんでしょう。


私の正義感が挫けそうになりましたが、それでも私は勇気を振り絞り、変質者に殴りかかったのです!


「ガンッ」という金属を叩いたような、鈍い音がなりました。


そして私の拳は、殴った衝撃のあまりの痛さに悲鳴を上げたのです。


この変質者は、自分の性癖の為に、肉体までも鋼鉄のように鍛えあげているのです。


何という性癖への執着でしょう。


まさに変態の中の頂点、変態王という称号がピッタリだと私は思いました。


そして悔しい気持ちもこみ上げたのです。


なぜ、これほどの力があるのに、自分の性癖に溺れ、正義の為にその力を使わないのかと…。


その時、遠くの方で若い女性の悲鳴が聞こえました。


すると、変質者は瞬時に飛び上がったのです。


それは人間のジャンプ力とは思えないほどの跳躍です。


いや、ジャンプではありません。


飛んでいるのです。


足の裏から炎を吹き出し、悲鳴が聞こえる方へと飛んで行ってしまったのです。


なんと、自分の性癖を満たす為に、自身の体をまでも改造していたのです。


きっと今頃、悲鳴上げた若い女性はさっきの変質者の餌食になっている事でしょう。


私は変質者を止められなかった自分の不甲斐なさで、怒り任せに近くの壁を殴りました。


私は拳のあまりの痛さに、またしても悲鳴を上げでしまいました。




それから三日間、拳の怪我が酷く入院する事になりました。

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