ナナシは怪異(?)に好かれている
ナナシ
第1話 メタルキャット・パラドックス【ショートショート】
これは私、ナナシが経験した体験です。
その日は蒸し暑い日で、異常なほどに喉が渇いていました。
自動販売機の周りには羽虫がまとわりつき、缶ジュースを買うのも嫌になるほどでした。
その自動販売機の陰から、雪だるまの形状をした機械がスーッと現れました。
その機械は短い手足に大きな目と横に裂けたかのような口をしていました。
私は恐ろしくなり、その場で腰を抜かし身動きがとれませんでした。
しかし、その機械はそんな私に少しづつ近づいて来るのです。
怯える私をその機械は裂けた口で笑みを浮かべるのです。
その瞬間、機械は短い手をギューンと伸ばし、あろう事か自分の腹部に自分の手をぶっ刺したのです。
私は現実とは思えないその光景に悲鳴を上げてしまいました。
そんな怯える私を気にも止めず、機械は自分の腹部をまさぐり、勢いよく手を抜き出しました。
手を抜き出した瞬間、場違いな陽気なメロディーが流れ、機械の背後が赤や黄色で輝きました。
機械の手には円柱状の物体があり、その物体を私に差し伸べ、耳に残る汚い声でこう叫びました。
「冷たーい、オレンジジュースーー!!」
その物体とは何とキンキンに冷えた缶ジュースだったのです。
缶ジュースを私に渡すと、その機械はまた自分の腹部に手をぶっ刺しました。
私にはその光景があまりにも恐ろしく、また悲鳴を上げてしまうのです。
その後、機械は自分の体の倍もある扉を腹部から無理やり、取り出します。
その異常な光景に私は気絶寸前です。
機械はその扉を地面に置くと、ドアを開けました。
そのドアの先は畳や机が見え、小学生くらいの少年の姿が見えました。
機械はその扉の向こうへ進むと、ドアを閉めました。
ドアを閉めると扉は地面の方から徐々に透明になり、最終的には扉は消えてしまいました。
現実とは思えない光景に私は呆然としてしまいました。
私は夢や幻覚を見たのではと自分に問いかけますが、右手には冷たい缶ジュースはあるのです。
その冷たい感覚に現実だと再認識するのです。
私は缶ジュースを見つめ、躊躇なくゴミ箱に捨てました。
よくわからない機械からもらった缶ジュースなど恐ろしく飲めません。
更に私はオレンジジュースが嫌いなのです。
不可解な行動をし、私に接触してきたあの機械は一体何がしたかったのか、未だに疑問に思います。
皆さんも知らない機械からもらった缶ジュースは、例え喉が渇いても飲まない方が良いと思います。
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