試練に抗い高らかに吠える、狼たちの恋愛譚、待望の続編です

人から狼へ姿を変える人狼、そんな人狼の群れの中でただ一人狼になれない、美しき銀髪の女性レティリエと彼女が思いを寄せる青年グレイルの恋模様を描いた「白銀の狼」、今回は続編にあたります。

前作では人間に捕らわれ売られたレティリエ、人間社会から脱出するために類まれなる知恵を発揮して人間の欲望と渡り合いました。

「白銀の狼」において読者を惹きこむ最大の魅力は主人公たちに次々と降りかかる重厚な試練だと考えます。
狼になれない不出来な自分、群れの中での孤独感、想い人へ告げられない諦観、狼と人間、種族間の間に位置する相容れない価値観の違い。
レティリエには様々な試練が次から次へやってきます。

続編である本作でも新たなる試練がレティリエとグレイルを襲います。
前作では「狼と人間」との戦いが描かれていましたが、今回は「狼と狼」、同種族による群れの抗争が主軸となって進んで行きます。

その中でレティリエは狼になれない自分と言う試練を改めて突き付けられます。
人間相手では価値観の違いを利用して得意とする知略が成功、しかし同じ狼相手に求められるのは狼としての強さ。
助けられ守られ力になれない、レティリエの心に苦悩が積み重なり、グレイルとの絆を試される展開が続きます。

苦しい展開が続く文脈からは、レティリエをとことん追い詰めて見せる! と、作者の絶対の意志が感じられました引き込まれます。
明るいだけが恋ではない、苦しみ悩み涙を流すシリアスの連続、でもだからこそ試練を乗り越えたとき、余りある感動を読者に与えてくれます。

人狼たちを取り巻く幻想的な世界観が光る、恋愛ファンタジーの傑作です。
前作を読んだ方もまだ読んでいない方も是非、目を通してみてください。本当に面白いです。

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