真実の愛なんてものは、楽でもなんでもない。けれど……

前作『白銀の狼』の続編。多くの困難を乗り越えてようやく結ばれたレティリエとグレイルですが、今作でもさまざまな危機に見舞われることになります。

もちろん前作も大好きなのですが、個人的には今作のほうが印象的でした。狼に変身できない人狼であるレティリエの前作での武器は、その美貌と知略。しかし今作の敵はなんと同じ人狼の群れ……しかも同じくらいの知恵者を有する強力な一派です。つまりレティリエは前作以上に自分の価値に迷い、パートナーであるグレイルとの関係に悩まされていくことになるのですが、その葛藤の重みがたまらなくドラマチック。

敵の群れは好戦的で容赦がなく、安穏な暮らしをしていたレティリエたちの群れはあっという間に追い詰められていきます。抵抗むなしく村が蹂躙されていく様は、まさに自然界の厳しさを見せつけられているかのよう。そんな未曾有の危機だというのに、レティリエは前述の通り狼としての戦力にはなれないのです。真面目で優しい彼女が心を痛めるシーンには何度も涙してしまいました。

また今作の見どころは、レティリエ以外の狼や種族にもスポットが当てられているということ。孤独に困難を乗り越えようとするヒロイックファンタジーから、種族同士の駆け引きや協力といった要素がプラスされた骨太なファンタジーへと変化を遂げています。

それでも『白銀の狼』は恋愛物語であり、一番の見どころはやはりレティリエとグレイルの心の絆の描写だと言えるでしょう。相手を信じているからこそ、負担になりたくない。すれ違いながら、また時には激しくぶつかり合いながら、ふたりの真の愛が試されることになっていくのです。ふたりが結論を出し、大きな戦いへと挑んでいく後半の勇姿は必見。

厳しい物語ですが、タグにもあるように最後は文句なしのハッピーエンド。主人公と一緒に苦悩し、絶望し、葛藤し、そしてすべてを乗り越えて幸せを掴みたい!という冒険心のある読者さんにおすすめの物語です^^

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