狼だから、守られるだけではいられない。命賭けて、その誇りを知らしめよ。

 前作「白銀の狼」の続編になる物語で、前作とは違う切り口から二人の愛情と絆を描いた、恋愛ファンタジーです。
 今回の敵は前作とは違い、同族でありながら違う価値観を持つ「別の群れの人狼たち」となっております。

 詳しい内容を書くと前作も含めたネタバレにつながってしまうので、ここにはざっくりとしか書きませんが、この対立構造がとても巧く練られており、読み手側は自然と主人公のレティリエに気持ちを寄せながら物語を追っていけるようになっています。
 このシリーズにおける人狼とは、人の姿と狼の姿、両方を使い分けることのできる獣人です。しかし、主人公(ヒロイン)であるレティリエは(前作に引き続き)狼の姿になることができません。彼女の特性は一般的な人狼の価値観に照らせば「弱さ」であり、強さを求める狼の価値観からすれば排除されてもおかしくはないもの。
 今作ではその「価値観の違い」が対立の中心に置かれており、他の群れの襲撃を通して、レティリエはその自分の特性と正面から向き合わざるを得なくなってゆきます。

 前作で孤独な戦いを貫いたレティリエでしたが、今作では孤独ではありません。でもだからこそ、彼女の悩みや苦しみはよりつらいものでもあります。極限まで傷ついた彼女が、それでも「狼らしく」立ち上がっていく姿は、胸に迫るものがありました。
 知恵と勇気だけではなく、本当の意味で共に戦うとはどういうことなのか。
 ぜひ、前作と合わせて見届けてください。

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