いつの時代も子供達が大好きなブランコ。
迫ってくる夕暮れに追い立てられながらも、子供達はその遊具に首ったけ。
そして誰もが一回は言われたことがある、あのセリフを耳にすることになるのです。
「じゃあ、十まで数えたらね」
今日もブランコが揺れています。きぃこ、きぃこと。
子供達が手を振ったあとも――「ずっと」。
*
少しだけぞっとするような始まりの短編。けれど他の方も書いていらっしゃるように、そのぞわわは全て塩水となって目から出て行ってしまいますのでご安心を。私は今朝からずっと目が腫れたままです。
もう涙なしでは読めません、たぶん何回読んでも尽きることはないと思います。子を持つ親はもちろん、自分の両親と重ねて考えてみても泣けます。この短い文量の中でどうしてここまで人間ドラマを煌めかせることができるのか、一周回ってもう不思議なくらいです(投げたァ!)。
作者さんのとあるシリーズを履修済みの方には嬉しいキャラクターの登場もあり、そこにもふふふとなっちゃうこと間違いなし。もちろんご存知でなくともまったく支障はありません。その塩梅も控えめなのが粋で大好き!さすがとしか。
生きているこの瞬間は宝石よりも尊くて、「繋がれていくもの」はこの世でなによりも強いもの。
どうか十分だけお時間ください。これを読まずして今年のカクヨムコン終われませんよ!
……いや私、あまりにも泣きすぎて三十分くらい滞在していましたけど^q^
揺れ動くブランコのように、感情をどんどん揺さぶられる物語でした。
主人公である「彼」は、ずっと一人で公園に留まり、ブランコを押し続けていた。
彼には未練があり、娘の藍子のためにブランコを押してやりたいと思っていた。しかし、藍子とはその約束を守れないままになっており、もう藍子には会えないのだと失意を抱えて過ごしていた。
そんな彼の前に、「ある人物」が現れる。
その時、彼は今まで知らなかった「ある事実」と直面することになる。
事実が見えてくることにより、「なるほど」と思わされ、気づけば物語の世界に強く引きこまれていました。
「ブランコ」というものを象徴的に扱い、「ある現象」を描き出した本作。
幼い子供と父親の思い出。そのかけがえのない一瞬。その時間のあたたかさを見事に描きだし、一つの「終わり」へと向かわせます。
ノスタルジックな雰囲気と共に、じわりと心に沁み入る作品でした。読んで良かったと強く感じられ、多くの人にオススメしたい一作です。
公園に一人の男がいた。男が見ているのは、一組の母子。母親がブランコに乗った娘の背中を押して、十まで数えたら家へ帰ろうと言っている。
いつもの時間の、いつもの光景だった。ところが、今日は母子の隣に青年の姿があった。母子にとってどのような関係なのか気になる。父親にしては若すぎるし、女の子の兄にしては計算が合わない。そんな風思ていると、その青年が男性に近づいてきた。
そして、青年が指を鳴らすと、そこは今までの景色とは違っていた。青年は、男性に会って欲しい人がいると言うのだ。その人とは――。
涙なしには読めない幻想譚。
是非、御一読ください。