紆余曲折だからこそ共感出来る。そんな人狼の彼女を描く、儚くも強い物語。

『白銀の狼』の続編となる本作。ラストまで読み終えました。

人狼の世界で描かれる、狼に唯一なれないヒロイン、レティリエが主人公の切なくも儚い恋愛を主体とした物語です。
1作目では、そのレティの美しさから人間に捉えられ、レティの愛しき人狼グレイルとの大恋愛を主体に描く、涙なしでは語れない『人間 対 人狼』の物語でした。

それが今作では『人狼 対 人狼』となっており、同種族同士で争うという、狼社会という人間社会にはない価値観の中で色んな難題に直面するヒロインを描く、己との葛藤や愛する者への感情で渦巻き、揺れ動く物語となっています。

彼女は最愛の人狼、グレイルとの間に深く思い悩み、読んでいてとにかく胸を打たれます。

『狼社会』という一見私達が知らないような世界や価値観ですが、それが物語の中にすっと上手に溶け込んでおり、私達が普段暮らしいる『人間社会』という立場から見ても全く違和感がない程、共感する場面ばかりで、うんうん、と頷きながらいつの間にか主人公レティにかなりのめり込んでしまっています。
彼女がその難題を一つずつ乗り越えていく様がまるで自分のことのように感じ、一緒に成長して乗り越えて行けるような感覚になってしまうという魅力が、前作から続くこの物語の素晴らしいところの一つだなと思っています。

レティがグレイルや仲間を心から愛しているからこそ、感じる嫉妬、増々な劣等感、愛するが故に歯止めが効かなくなる様など、人と人との間に織り成される様々な気持ちが、すっと難なく胸に染み込んでいくように描写され、うるっと来てしまい、作者さまの素晴らしい執筆力に前作から毎話ごとに脱帽してしまいます。

そして毎話毎話瞬時に人を惹きつけるストーリー、魅力的な登場人物にいつも引き込まれ、物語の中に溶け込んでしまう、そんな素晴らしい物語です。

ラストはまたまた涙。
ここまでの苦難な道のりがあったからこそ、様々な思いが私自身にも押し寄せてきました。

ぜひ1作目からこの儚くも強い物語を感じていただきたいな、と心から願います。

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