1920年代のアメリカを舞台にしたこの物語。
一言で説明すると、冴えない女だと自称する20代後半の女性、テイタムが主人公で、彼女が関わる人物達と奈落の底へ落ちていくお話です。
読み進めると、その奈落への吸引力がどんどんと増していき、あっという間にラストへ辿り着いていました。
海外文学のような雰囲気がとてもあり、読みやすく、巧みな描写力で、古いアメリカの時代に読者の世界を染めてくれるのも心地よかったです。
この物語で、主人公テイタムの人生を知ると、正解は一体何だったのか、彼女は何を選択すればベストだったのか、と考えずにはいられません。
私達もテイタムと同じようにその瞬間瞬間をベストだと信じながら、生きているわけですが、もしかしたら彼女のように奈落へ向かっている場合もあるかもしれません。
それでも、彼女のように必死に生きてきたそれまでの道は、誰にも否定できないものだと思います。
そんなひとつの『正解』をぜひ知っていただきたい、そんな物語です。
おすすめです。
読み出したら止まらない。
完全に酷いことになる結末しか見えないのに、怖いもの見たさで先へ先へと読み進んでしまう。
久々にそんな作品に出会いました。
人物描写が非常に巧みな作者さまです。
常に受け身で、壊滅的に人を見る目のない主人公・テイタムの人となりが、その生い立ちからリアリティがありました。
周囲の人々はみんなあまりにも身勝手で、テイタムはただただ翻弄され続けます。
このストレスフルなはずのストーリー展開に、凄まじい勢いで惹き込まれました。
1920年代アメリカ風の情景描写も素晴らしいです。
当時の生活や空気感まで伝わってくるような精緻な筆致で、まるで映画を観ているかのようでした。
ラストは行き着くべくして行き着いたような、見事なバッドエンドです。
ここまでくるといっそ清々しい。
だけど、こんなに惨めで哀しい人生でも、テイタムが最期まで信じて貫いた「正しさ」が、唯一燦然と輝く美しいもののようにも思えました。
すごく面白かったです。すごい。読めてよかった。ありがとうございました!