おかしな秘密のおかしな関係

日本中から愛される天使系アイドル最上まこには、えげつない秘密がある。見かけに反してその性根がおっさんであること。そして、ゲイのおっさんのフリをしてネット上でBL 小説を書いていることだ。
そのクラスメイトの立石隆斗くんにも人には言えない秘密がある。最上まこをデビュー当初から推し続けていること。そして、ネット上では腐女子のフリをしてイラストを描いていること。

あるとき、立石くんはゲイのおっさんのBL小説『銀氏物語』を発見、その内容の繊細さに魅了されてしまう。それは前代未聞、複雑怪奇で抱腹絶倒なシチュエーションコメディの幕開けだった。

ここで、この作品のポイントを挙げよう。
まず、最上さんと立石くんの抱えている秘密が一つではなく二つあること。このズレが次々とおかしな状況を生み出していき、物語はクライマックスまで緩むところがない。
次に、ライトな文体。難解なところが全くなく、さくさくぐいぐい読ませる筆致は、ライトノベルとして非常な強みである。
最後に、脇役。主人公が魅力的であることは言うまでもないが、この作品の脇を固めるキャラクターは主人公を喰いかねないほどに魅力的だ。なにせ本筋の鍵となる『銀氏物語』の元ネタは、脇役であるはずの水戸マネージャーなのだから。彼、すごいかっこいいよ。

率直に言って、書籍化してもアニメ化してもファンがつくこと間違いなしな作品。流行りものに敏感なひとにもチェックしていただきたい。
現在の最先端をいく現代ドラマは、こんなにおかしな〈秘密〉をまとってあなたの前に現れたのだ。

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