あんなペンネームを付けてしまったのに、

凛々サイ

プロローグ

プロローグ

 今僕は夢を見ているのだろうか。

 ずっと憧れていた『守ってあげたい少女ナンバー1』、僕の推しアイドル『最上まこ』がこんなに狭い車内の空間で僕の隣に座っている。


 近い、近いって……!

 なんでそんなに僕を見つめてるんだよ……!!


 僕はまともに『最上まこ』を見ることも出来ず、さっきから自分の制服のズボンしか視界に入って来ない。


 だけど、僕は中学時代からずっとずっと憧れていた僕の推しアイドル『最上まこ』のを見たかったんだ。



 ――そう、それは『ミカエルスマイル』


 

 誰もが癒されるその大天使の微笑みさえ見ることが出来れば、は夢だったと思おう。


 隆斗りゅうと、ガンバレ、ガンバるんだ……! 

 お前が3年以上密かに推してきたアイドルが今、目の前にいるんだぞ?

 コミュ障のお前でも見る事ぐらい、出来る、出来るはずだ……!!


 小刻みに震えるこの体に抵抗しながらも僕はとてつもなく勇気を出して隣の『最上まこ』をそーっと視界に入れた。


 すると目と目があった。


 その時彼女は僕に笑いかけたんだ。


 しかし


 誰もが癒されるあの『ミカエルスマイル』ではなかった。


 それは不適な笑み。


 使の微笑みだった。

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