第17話 群青
イリソスは坑道を
覚えのある坑口の形が彼の視界に入る。内から臨む穴は
「あぁ……」
日差しの中に
眼下遠くには
「君には、ラウレイオンが、グラウコピスが……地上がこんな風に見えたのかな。闇に潜っていた君の晴れやかさは……演技だけじゃない」
山肌を鱗のように覆う緑樹は
やがて陽光に煌めいていた
東の空から広がる暗がりに
――君は嘘つきだ。
――君の願いも、祈りにも似た戦いも僕は知らなかった。
――君はずるい。
――君はいつも称賛を凌ぐ嘲りの近く。
――でも、君はいつも遠くだけを見ていた。
――僕がもう呪いのさだめを見つけていたことを君は知らない。
――どうして君は僕を見つけたのだろう。
――もし僕が女神の民でなかったら君は僕を選んだろうか。
――僕を捕えて君は僕に縛られたのか。
――ここが天空の底と教えない君はどこへ行けただろう。
――宝に身を飾ることの許される女神の似姿に生まれながら。
――赴かずとも呼ばれる冥府をばかり見つめた君。
――この地をどれ程、慈しんでも人の子の手からはこぼれ落ちる。
――君は大事なことは伝えない。
――僕の体から脂は尽き、この手からもラウレイオンはこぼれそうだ。
――君は嘘つきで嘘つきで、ずるくて残酷で。
――天空の底はこれ程に美しい。
散り行く己の体を感じながら、イリソスは平らかだった。その意識にふと、かつてラウレイオンの多くを語った古参奴隷の姿が浮かぶ。今の自分の魂に肉が備わっているならば、彼に似た笑顔だろうことを彼は信じて疑わなかった。
――今、悟る、君の満たした呪いの名、それは
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