第 7話 苦土
「行って来るわね」
「迎えに入ってはダメよ?」
イリソスの心を読んだように彼女は振り返った。後を追いたげなイリソスの様子に笑みを浮かべ、クロエは松明を坑口の
オイルランプを手に取ると再びクロエはイリソスに背を向ける。今も見送るしかないその後ろ姿が
イリソスはクロエの
鉱山町の跡を離れ、山腹に出ると彼は鍬を踏み込んだ。乾いた表土を幾度も掘り起こすと、更に石と
「こんな土で育つのか……?」
まだ光に
彼には耕作の経験がない。しかし、
イリソスは倒れるように、その上へと寝転んだ。太陽は容赦なく照り付け、逃げ込む影もない。
「本当に、僕は使えない……」
この体に強さがあれば、がむしゃらにこの地を掘り起こせただろう。
この頭に賢さがあれば、何をすべきかわかっただろう。
思っても仕方ない引け目にとらわれながら、イリソスは天を見つめる。
かつてラウレイオンには
それをさえ受け入れたつもりでいたイリソスだが、彼女と離れ、目前の喜びを失うと、眠っていたものが暗がりから湧き出て濃さを増す。
――どうして君は僕を見つけたのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます