第 8話 グラウコピス
太陽が沈み、新しい日の始まる時、イリソスは当番を
闇に女の顔が浮いている。
しかし、それが
「何してるんだ。一人じゃ、危ないだろ」
彼女は苦笑気味に、背負う弓矢を揺らし、小刀をちらつかせる。
「私、
「でも! ……送るよ、家はどこ?」
断られることを予期して申し出たイリソスの誘いに彼女は黙って居住区へ歩き出した。
ラウレイオンは作業区から遠い程、条件に恵まれ、裕福な者はこの
「ねえ、
小さな
「あなた、私を信じてるの? かわいい人ね」
からかうような口調と表情は炎の影で
「頼めるかしら? これ、預かって欲しいの」
彼は恐る恐るその
「あんなに惜しんで貯めてるのに! 持ち逃げされたらどうするんだよ」
「窓口さんらしい」
おかしそうに笑った後、クロエは彼の視線をとらえる。
「銀は重くてダンジョンでは邪魔なの。でも、全部置いて
クロエは彼の手の中で台座を閉じ、容器を再び女神像へ変えた。
「……お互い、得でしょ」
彼女は像の開け方を教えなかった。
「次に下弦の月が昇る時、谷へ来て。闇夜の内に水浴びするから、月の出る前に来てはダメ、よ?」
像を持つ彼の手の上からクロエは手を添える。
「ちょっと待ってて」
反射的にイリソスは像を彼女の手に戻し、しゃがみ込んで足元を探った。クロエがやや呆気にとられて見るのを待たせると、
「これ」
彼は乾き切らない日干し
「仮だけど、預かり証だよ。もしかして、この国の文字が読めない?」
「読めるわ。イリソス……
クロエはいつになく静かに
「あなた、
――もし僕が女神の民でなかったら君は僕を選んだろうか。
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