第 9話 町
人の姿の見えない町の、物言わぬ石材から奇妙な沈黙の気配が漂う。
イリソスは
車の鳴る音に幼い男児が飛び出しかけ、それを老女が慌てて抱き留めた。子供は
「近寄っちゃ、いけない。あれは魔女の
「魔女?」
「山には魔法を使う悪い女が
老女は恐ろしげな顔を作り、それに
「そうだ。怖いからね。絶対に近付いちゃいけない。山にも、山から下りて来る男にも」
車は石畳に弾みながら、彼らの前をただ過ぎて行く。
間もなく夕焼けがたなびき、山を登る内、空は黄昏時の暗みを帯びた。沈みかけの
彼は燃えさしから火を
『どうして魔女をやっつけないの?』
『魔女は強くて町のもんじゃ、敵わないさ』
『じゃあ、あいつ!』
子供は琥珀色の
『魔女と
イリソスは
『……捕まるようなことって?』
『とにかく魔女に気付かれないことだ。いる、と知られちゃいけない。だから、あいつに近付いちゃいけない。お前を気に入ったら、あいつを食べて、お前を捕まえてしまうよ』
――僕を捕えて君は僕に
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