ネットの《海》に投げたボトルレターひとつ

ネットは時に海に例えられます。
何処まで拡がっているのか、果てがなく、様々なものが流れつき、また遠ざかっていくからでしょう。
わたしもあなたもネットの海で絶えず漂流を続けている、いかだのようなものです。なにげなく、浪に投げこんだボトルレターが誰かに拾われることもあったり、あるいは他の誰かが書きこんだあてのない手紙を釣りあげたり。
こちらの小説もそう。投げたボトルレターを拾ったものと、拾われたもの。ほんのひと時、同じ海流に乗って、声を掛けたり手を振りあったり。……悪夢をみた「ぼく」に浪のむこうから掛けてくれた「彼女」の言葉が、貝殻に耳をあてたときに聴こえる潮騒のように、こころから離れません。感動しました。
この言葉を必要としている御方はきっとたくさんおられるとおもいます。このレビューという「ボトルレター」を拾われた御方には、ぜひともあの台詞を読んでいただきたい。そう願っております。

最後になりましたが。
わたしもおなじようにネットの海でたくさんの御方と出逢い、時に別れ。ともすれば、不思議な御縁で再会を果たしたこともあります。

願わくば、「ぼく」と「彼女」の縁が何処かでまた繋がることを祈って。

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