光凪ぐとき、心穏やかにして

今はもう連絡の手段すらなくなってしまったけれど、十年二十年のときを隔ててもなお、思い出す人はいませんか?
私にはいます。
ネットの中で知り合った方。ゲームの掲示板で、意気投合して、アドレスを交換しました。
遠く北の地に居て、当時学生だった私は、彼女に会うことも、また会おうと考えることもしませんでした。そしてそれで満足していました。
メールのやりとりだけで、誰よりも心が繋がっていたように思えたのです。
顔も環境もわからないからこそ見せられる、強さと弱さと本音。
ネットには嘘が溢れているけれど、同時に、この社会に嘘を吐くことでしか生きて来れなかった人たちの本音が隠れているんじゃないかなって思うのです。

この作品に出てくる二人も、ネットの世界で知り合い意気投合し、その日の出来事を分かち合った。
こんなふうにやさしい世界で、多分私たちも出会っている。『ぼく』と『なみさん』のように。

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