第12話 夜間
「――追いかけよう!」
「高瀬君!?」
店を出て彼女の背中を追いかける。もう後戻りできない。やっぱり最初からこうしておくべきだった。そうでなければ、この不可解な現象を否定することができない。そうでなければ・・・。
もしかしたら
万が一
そのような場合は・・・・・
「落ち着いてってば!」
「うわっ!」
ビュンっと風が過ぎ去り、目の前に立ちはだかった宮部さんに驚いて思わず尻餅をつきそうになる。でもここで引くわけにはいかない。
「どいてくれ!」
「わかった!わかったから落ち着きなさいってば!」
人の往来は少なくなったとはいえ、建物の多いこの街の中でカナタさんはあっという間に紛れてしまう。
「わたしが先に行く。」
「え?」
「君より早いからたぶん、追いつけると思う。で、ちゃんと連絡とるから。」
スマホの連絡番号。そうか、そうかもしれない・・・
「・・・・わかった!頼んだ!」
「まかせて(笑)!」
ダッシュで走り出した彼女の背中を必死に追う。交差点を曲がる。曲がれば段々と細く、暗い田舎道になっていく。思い出した。ここは街も田舎も、意外に隣り合わせになっているんだ。
「はぁ、はぁ・・・。」
道は細い。ここは通学路だ。あぜ道で、側に川が通っているのだろう、ザーザーと流れている。街灯も1,2本がポツンと立っているだけ。もう見失わないだろう。だが、宮部さんはどこへ行ったんだろう?
見えていたはずの姿がない。この道はいくつか分岐点で分かれているし、どこか、角の木々にでも紛れてしまったのだろうか。
ゆっくりと歩いて息を整える。
なんだか寂しい場所だ。ここに来るまで一本道だったこともあるし、電波もつながっているから迷うことはないはずなのに、すでに夜となった田舎の景色ほど怖いものはない。
―大丈夫?
メールを入れてみるが返信はない。点在した家々の遠いわずかな光をたよりに歩き続ける。それはふっと、目に入ってきた。
見ればどの道よりも細い道の先。
「?」
なんだろう、家から離れたところにあんな大きな建物がある。
気になって足を運ばせてみる。段々と近づくごとにわかってきた。おそらくあれは木造らしい。窓もたくさんある。
あれは門だろうか、いや、柵かもしれない。
なにか、玄関らしき入り口の上に書いてある。
それは
プルルルル
「―っ!」
反射的にとったスマホの画面から声が聞こえてきた。よかった、見つかったんだ。
「もしもし、いたよ・・・カナタさん。」
「えっどこに。」
「・・・それが、実は学校なんだ。うちの。」
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