第10話 棘
「痛っ!」
玄関で足に小さな痛みが走った。思わず上履きの裏を見るが何もない。まさか内側だなんてことはない。
・・・・・何も?
ダニ、の可能性は・・・と思い浮かべたところで
慌てて保健室に駆け込む。
「せ、先生!」
「珍しいわね。どうしたの?」
先生はいつもの白い机に書類を片付けているところだった。
「足が」
「うーん?どれどれ、こっちへ来て・・・うん、何もない!たぶん神経的なものでしょう。」
「・・・」
「大丈夫よ?」
この先生は本当に、専門的なことを言わない。というより、若干適当な気がする。だが腕だけは確かだと評判だ。
ともあれ異常はなかった。不思議なこともあるが、靴擦れじゃない?あるいは足が成長したんでしょ。という先生の言葉をすっかり信じ(るしかなかっ)た僕は遅刻ぎみの生徒と一緒に教室へと向かう。ギリギリまでアニメを見ていたのが災いした。チャイムが鳴った。間に合った、朝礼の時間だ。
窓からはすっかり秋になった風景がある。門から遊歩道としてある道筋の桜も緑を落とし、代わりにあの木造の校舎、井戸のそばにある大きな銀杏の木が色づきはじめている。
ピアノの音がきこえなくなってから1か月が経つ。
「・・・」
ーーー
「よし!テストも終わったしどっか行こう!」
宮部さん、そのスマホはなに。
玄関で待ち合わせをしていた。どこかで食べようと誘われたのだ。嬉しい反面、あまり人のいる場所には行きたくないし、でもせっかくだし。という生半可な状態である。だが、彼女がソレを取り出すなんてことは、滅多にないことだ。そう、
「心霊スポットだなんてやめてね。」
彼女はオカルトなことがあると写真から撮影まで始めかねない女子生徒だ。そういった話が通じると思われたのか、あっという間に僕の携帯にはそれ系の掲示板だのなんだのの情報を追加され、最近はホーム画面に出てくるおすすめ画像を見ないようにしている。
「それよりも食べに行くんじゃ」
「そうだった。っていいたいところなんだけど、まぁ常備でいいじゃん。こういうのは。」
要するに通常運転らしい。つまり、何か神秘が起きれば特攻できるという準備らしい。
二人してそんなことをしているのがおかしく思われなくなっていた。
勉強中、うっかり目にした携帯のルームサイトに僕の話題があり、「パシリ乙」とか書いてあったが。
「ふっふっふ、板についてきたじゃないか君。」
「全然うれしかないよ。なんでそんな不敵なの・・・。」
ーーー
カフェに来ている。
この間撮った校舎内の画像を、食べてる最中に見なくてもいいと思う。
「あれ?」
だが、不思議なことが起こった。思わず彼女も口を開く。
以前は何もなかったはずの写真の一枚、1階の廊下の写真に妙な光が映りこんでいた。
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