第5話 夕陽

――世界が幻想でなければならなかった理由。


「やば、携帯の充電もうない。wifiもやっぱり繋がないかー。」


「なにしてんの・・・。」


「ここまで来てすることってコレ《撮影》しかないでしょ。」


「」


「あちょっと冗談だって、それとなく距離とらないでよ。・・・まぁ運が良ければ、ってね?」


「悪ければ、でしょ?」


「もう、君はチキンだね。」


「いいよそれで。」


「丸焼きが美味しいんだよね」


「ぅ嘘です、ごめんなさい。」


「そーいうとこ(笑)」


静かに踏み入れた建物は案外綺麗で、少しほこりが舞う以外はすべて、机も椅子も整えられていた。大きな段ボールなどが山積みにされていてもどこか整然としている。古臭さはない。


「だれもいないね!」


彼女はときおり、この「ちょっとした冒険」にオーソドックスなセリフを呟くのを楽しそうにしていた。


「あの部屋行ってみようよ。」


まだ夕日の熱が残る廊下を二人して歩いている。外からの声も聞こえてこない。



二階に来る。



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