第8話 無音
「―あなたも?」
思わず口をついて出ていた。窓が開いているのか、熱から冷めた風がカーテンをふわりと持ち上げる。
「「カナタ」よ。2年。あなたたちはなに、もしかして、心霊ごっこ?」
「ぶっ、」
ごっこ・・・?まさかの自分たちが幽霊疑惑に緊張が解けたのか、笑い出す宮部さん。
「フフっ、い、いや・・・(笑)あの、あたし宮部 葵っていうんですけど、実は半分はそうだったんですけど、あたしたちも音を聞いちゃったんです、ピアノの!」
「いや半分ですら幽霊になっちゃたまんないよ・・・ごめんなさい、悪ふざけじゃないんです。最初は僕だけ聞こえてたのを彼女に誘われて、散策することになったんです。」
我ながらうまく口が回ったと思う。本当のことだけど。彼女はしばらく考える風をしたあと、そっとピアノに手を触れた。
「ふうん、そうだったの。」
「もしかして、弾けるんですか?」
パアッと顔を輝かせてスマホを握りしめている。
「うん。少しね。」
とわずかに微笑んで椅子に座ったカナタさんはペダルを踏むようにして
カチャ、という静かな物体が抜け落ちたメロディーともに響く。哀し気な目をしているな、と思った。
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