第14話 よかった

学校というのは日中にあるものだ。禁忌を見てしまった罰なんじゃないかと錯覚するように、畳みかけるほどに鬱蒼とした闇を抱えているソレが、街灯という光を借りて、辛うじて佇んでいる。


「よかった!どこへ行ってたのか探しに行こうと思ってたんだよ!」


校門から駆けてくる彼女の顔が次第にはっきりしてくれば、なんだか青白い。


「ごめん。実は――」


申し訳なさそうに。


「見失っちゃった。カナタさん。ここに来たはずなんだけど。急にあの校舎を右折して。走ったんだけど間に合わなかったみたい・・・。」


「いいよ、いいよそんなこと・・・。」


まだ茫然としていたらしい、顔を覗き込まれてハッとする。正直一刻も早くこの建物から離れたい。生暖かい風が校舎の木の匂いを連れて来る。嫌だ、来ないでくれ・・・・・。


「もう、帰ろう?明日にでも聞いてみよう!ね?!」


「そうだね・・・。」


そう頷くしかなかった。


「・・・ねえ、大丈夫?」


大丈夫ではなかった。


そうして最後にこう言い放った。


「よかった。君が純粋で。」


・・・・・・・・・・・・・?!


「な、なにか言った?!」


「?・・・・何も?・・・・・あ!もしかして、これが実話怪談ってやつ?」


「かっ・・・帰ろう!」


これは空元気だ。砂の音を立てて足早に歩きはじめる。まだ風が、僕を誘っている気がした。あれは幻聴に決まっている。きっと・・・


きっと

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残響のきみへ 朝凪 渉 @yoiyami-ayumu

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